悪性リンパ腫は、リンパ球であるB細胞、T細胞、NK細胞の異常増殖によって引き起こされるものであることが分かりました。それに対して一般のガン細胞は、人体中の様々な場所で発生するものの、基本的には体細胞の分裂ですから、特定の場所で発生します。
従って一般のガンは、その発生した部位によって区別されます。つまり肺で発生すれば肺ガン、胃で発生すれば胃ガンというわけです。
これに対して悪性リンパ腫は、造血幹細胞が骨髄でいろいろな細胞に分かれ、その一部がリンパ球をつくる幹細胞として胸腺やリンパ節に移動し、そこから病気が発生するわけです。
B細胞やNK細胞は骨髄でそのまま成熟しますが、その後B細胞はリンパ節に入って抗原に接し、免疫を獲得し、より成熟したB細胞になり、NK細胞はそのままリンパの中で腫瘍細胞等を攻撃します。
一方T細胞は骨髄を出て胸腺に入り、ここで生体にとって不都合かつ未成熟なT細胞が取り除かれ、その後成熟したT細胞となってリンパ節に移動します。
いずれにしても、骨髄中の造血幹細胞が分化することによって、最終的にそれぞれのリンパ球になるわけですが、体細胞分裂と大きく違うのは、成長しながら体内を移動すると言うことです。
つまり体細胞は、ある組織の一部が体細胞分裂をするときに、その分裂過程でミスが起こりガンとなるわけですが、この間その細胞は移動しません。
ところが悪性リンパ腫を発症するリンパ球の場合は、骨髄、胸腺、リンパ管、リンパ節の中を動きながら成熟するわけで、どの時点で悪性リンパ腫としての異常な細胞分裂能力を獲得したかが問題になるわけです。
つまり通常のガンと違い、
@ リンパ球のB、T、NKのどれが異常増殖をしているのか
A それぞれの成長過程で、どの時点で異常な増殖が始まったのか
B その増殖を始めたのはがどの場所なのか。
C 結果としてその増殖細胞の大きさや形、構造はどのようなものなのか
が問題になるわけで、それぞれの段階、場所、細胞の形によって、悪性リンパ腫が様々な病名に分類されるわけです。その意味では、以下のようにもう少し詳しく、造血幹細胞の分化について整理した方がよいのかもしれません。(左側が元の細胞で、右に進むに連れて分化していきます)
造血幹細胞 (骨髄) |
骨髄系 幹細胞 (骨髄) |
巨核球・ 赤芽球 幹細胞 |
巨核球 | 血小板 | ||
赤芽球 | 赤血球 | |||||
顆粒球 マクロファージ 前駆細胞 |
樹状細胞 前駆細胞 |
樹状細胞 | 白血球 | |||
マクロファージ 前駆細胞 |
単球 | マクロファージ | ||||
好中球などの顆粒球 |
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リンパ球系 幹細胞 (骨髄) |
B前駆細胞(骨髄) |
B細胞(リンパ節) | リンパ球 | |||
T前駆細胞(胸腺) |
T細胞(リンパ節) | |||||
NK細胞(骨髄→リンパ節) |