悪性リンパ腫と炎症の関係


 EBウイルスと悪性リンパ腫は何らかの関係がありそうだと言うことは分かりました。そこで、じゃあこのウイルスはリンパ球に対して、どのような作用をするのか、具体的にその作用の流れみたいなもの(作用機序)が分かればと思い調べてみました。

 するとあるにはあるのですが、とても今の私の知識ではそれを読み解くことは出来そうにないように思えたので、とりあえずウイルスに関しては、何らかの関係がある可能性を否定できない、と言う程度で満足と言うことにしたいと思います。

 で、その次に気になっているのが炎症です。すでに一度書いていますが「慢性炎症刺激」と言われているものが、悪性リンパ腫発症の原因になっている可能性があるという研究結果が出ています。

 これについては2009年5月4日の新聞で、東京大学や国立がんセンターの医療チームが、その関係を解明したという報道で知りました。

 内容は、一部の悪性リンパ腫では胃炎などの慢性的な炎症が、発症の引き金になっているということのようで、この炎症を抑えることが出来れば治療の可能性も出てくることになります。

 このことが分かったきっかけですが、先ず悪性リンパ腫の患者さん約300人の内、ある特定の遺伝子に変異がある患者さんが2割いたと言うところから話が始まっています。

 この遺伝子はA20という名前の付いた遺伝子で、炎症発生時にリンパ球が際限なく増殖しないように抑制する役割を担っています。

 この研究の成果ですが、このA20の変質により、この抑制が効かない状態のとき、炎症に寄って生じるリンパ球への刺激物質があると、リンパ球は勝手に増殖を始めるということです。

 つまりA20という遺伝子に異常のある人が、何らかの炎症を起こすと、その炎症によって細胞から刺激物質が分泌され、それによってリンパ球の増殖が始まり、A20がないためその増殖は止まらないということになります。

 となると、この炎症によって生じる刺激物質とは何か、ということが気になります。A20に異常があると言われても、それはもうどうすることも出来ないと思いますが、炎症を抑えるとか、炎症によって生じる刺激物質の正体が分かれば、何らかの治療手段が生じる可能性があります。

 そこで最初に戻って、改めて炎症とはどのような現象かを調べてみました。その結果ですが、先ず生体に細菌、ウイルス等の感染が起きた場合、アレルギー反応が起きた場合、外傷ややけど、凍傷等の物理的な傷が生じた場合、化学薬品等で組織が傷ついた場合に起きる防御反応であると言うことです。

 これは日常的に理解できる内容です。続いてこの防御反応に伴う症状ですが、「発赤」「腫れ」「痛みや痒み」「発熱」等の反応が起きます。

 では何故このような反応が起きるのかというと、なんらかの刺激を受けた組織は、先ず組織内に含まれる細胞がなんらかの化学物質を分泌します。

 するとこの化学物質により、血管が拡張し血流が活発になります(発赤)。続いて血管内から液体の血漿成分がにじみ出し周辺に広がります(腫れ)。さらに白血球やリンパ球が損傷箇所に集合し、異物を取り込んだり分解したりします(痛みや発熱)。最後に新たな細胞が出来、それらの細胞を組織内に結合させて修復が終了します。

 というわけで、この流れから考えると、最初に異物を取り込んだ瞬間に放出される物質がリンパ球の増殖も促すと考えられますので、この化学物質の正体は何かと言うことが気になります。

 そこでかなり専門的なページを見てみたのですが、正直なところさっぱり分かりません。ともかく炎症と一言で言っても、その細かい経過をきちんと追い、その途中で分泌される物質は何か、そしてその物質はどのような作用があるのか、と言うことを専門用語で解説したページはあっても、初学者用に説明した文章は、ネット上では見つけられませんでした。

 分泌される物質一つ取っても、その名前はとてつもなくたくさんの種類があり、素人が簡単に理解できるものではないと言うことだけはよく分かりました。

 しかしここで簡単に引き下がるのも悔しいので、「炎症 増殖刺激物質」という語句で、リンパ球等の増殖を刺激する物質について書いてあるページを探しました。

 その結果、病理学のページで、先ず「サイトカイン」という名称が出てきました。これは細胞を活性化する物質の総称だそうです。その中で記号で書かれているのでその正体はさっぱり分からないのですが、「IL−1」「TNF]という物質が、白血球の一種であるマクロファージから分泌され、これが細胞増殖に関係する物質だと言うことが分かりました。

 従って、ここまでの私の理解が正しければ、A20というリンパ球の増殖を抑制する遺伝子が変質してしまった人がいて、この方が体内でなんらかの炎症を発すると、上記の「IL−1」「TNF]と言う物質がマクロファージから分泌され、リンパ球が増殖を始めるわけですが、この時抑制遺伝子が変質しているため、炎症が終了しても増殖が止まらず、それが悪性リンパ腫になる、という流れになるのかなと解釈しました。

 (私の知識は高校の生物レベルの知識ですから、著しく間違っている場合も考えられます。あくまで個人的な考えだと言うことで、読んでいただければと思います)


表紙に戻る 悪性リンパ腫の基礎知識 患者数の推移