尿中のクレアチニン

 クレアチニンは、私の連れの腎臓機能が衰えていると言うことが分かってから、よく話に出た指標でした。(ただし尿中のクレアチニンではなく血液中のものです)この物質は筋肉の代謝に関係した物質です。

 どうゆう関係かというと、我々が普段行う運動に伴って筋肉が収縮するわけですが、当然この収縮にはエネルギーが必要です。

 そこでこのエネルギーを産み出すために筋肉中のATP(アデノシン三リン酸)という物質がADP(アデノシン二リン酸)という物質に変化します。つまりATPがADPに変化するとエネルギーが生まれるという、まあある意味夢のような話ですが、これが日常的に体の中で起こっています。

ATP → ADP + エネルギー

 しかし運動が激しければ当然筋肉中のATPはどんどん消費され減っていきます。そこでさらにATPを作る必要性が生じます。

 このATPを作る方法は二種類あります。一つは肝臓や筋肉中に含まれているグリコーゲンという物質を酸素によって分解する方法です。これは酸素が充分供給されていれば、どんどん作れます。

グリコーゲン + 酸素 → ATP + 二酸化炭素 + 水

 そのため動時には、我々は呼吸を早くして、たくさん酸素を取り入れる必要が生じます。肩で息をしつつ「はーはー」言いながらも呼吸をするのはそのためです。

 一方それでもATPの生産が間に合わない、すなわち酸素の供給量が追いつかない場合もあります。その場合酸素不足となり、グリコーゲンを分解してATPは出来るのですが、その際乳酸(C3H6O3)という物質も出来てしまいます。(火が燃えるときの不完全燃焼で一酸化炭素が出るようなものです)

グリコーゲン → ATP + 乳酸(疲労物質) 

 この乳酸が筋肉中にたまり出すと、我々はそれを「疲れた〜、もう動けない」と意識することになります。つまり酸素不足でATPの生産が間に合わないぞ〜、と体が警告しているわけです。

 と言うことは、その状態で酸素を再び供給してあげればATPの生産が行われることになります。マラソン等でゴールで倒れ込む選手に、酸素吸入をするのはそのためです。

 またそういった酸素不足を予測して、マラソン選手は酸素の少ない高地でトレーニングをして、肺がそういった状態でも充分に活動できる状態を作り、平地での試合に臨めば、余裕をもって酸素を取り込めるというわけです。

 以上が一つめの方法で、二つめがクレアチニンに関係するものです。筋肉中でATPが消費されADPが増えると、そのADPに作用してATPに戻すはたらきをする物質があります。これをクレアチンリン酸(C4H10N3O5P)と言います。

ADP + クレアチンリン酸 → ATP + クレアチン

 反応が終わったクレアチンリン酸は、今度はクレアチン(C4H9N3O2)という、これまた名前の似た物質に変化します。このクレアチンの一部は、体が激しい運動をしていないとき、ATPを使って再びクレアチンリン酸に戻り、運動時に備えます。

ATP + クレアチン → ADP + クレアチンリン酸

 また必要がないときは血流により腎臓に運ばれます。腎臓でろ過されたクレアチンはクレアチニン(C4H7N3O)という物質に変わり、尿と一緒に排出されます。

 従ってクレアチニンの数値と言う場合、先ず血液中のものなのか尿中のものなのかを区別することが必要です。またその数値を比較してクレアチニンクリアランス(腎臓がどの程度老廃物を排出できているかを比較する)という数値で表すこともあります。

 一般的には血液中のクレアチニンが多すぎ、それに比べて尿中のクレアチニンが少なければ腎臓の機能障害が疑われます。

 つまり

・ 「血液中のクレアチニン量が多い」かつ「尿中のクレアチニンが少ない」=「腎臓の機能障害」

が考えられるという事です。


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