治療の難しさと治療の種類

 基本的に悪性リンパ腫の治療は、異常な増殖をしているリンパ球の増殖をとめるか、排除するかという方針になると思います。

 しかし通常のガン細胞のように、ある場所にかたまって存在していれば、その部分だけを切り取って摘出するとか、その部分に放射線をあててガン細胞だけをねらい打ちにして増殖機能を破壊するという方法がとれますが、これまで説明してきたように相手はリンパ球なので、全身のどこにでも分布していることになります。

 つまり特定の場所にかたまっているように見えても、異常な増殖をするリンパ球が全身のあちこちをフラフラと徘徊している可能性があるわけです。

 しかも血液検査のところで調べたように、白血球は血液1(μL)中に5000個ぐらいあり、その内の40%ぐらいがリンパ球だとすると、2000個ぐらい存在します。

 ということは1辺が1(mm)の立方体(これが1μLに相当します)の中に、リンパ球だけで2000個ぐらいあると言うことです。(白血球の直径は10(μm)なので、0.01(mm)となります)

 体重60kgの人の血液の総量は4.6kgぐらい。従ってリンパ液と併せて仮に5kgとすると、単純計算で100億個ぐらいのリンパ球が全身に存在する計算になります。(いい加減な計算かもしれません。要するに体の中にものすごい数のリンパ球があると言いたいだけです)

 その中のいくつかのリンパ球または造血幹細胞が制御の効かない身勝手な増殖を始めたのが悪性リンパ腫という病気だと思います。

 ただ幸いわいにも通常の我々の体の中には、そういった異常な細胞を破壊する機能(免疫)も組み込まれているので、そう簡単にガンや悪性リンパ腫を発症することはないというわけです。

 これは例えば、日本の人口1億人の中に数人悪いことをする奴がいても、通常は数万人単位の警察官がいるので、犯罪を未然に防いだり、例え多少の犯罪が起きてもそれ以上拡大しない、と言う状況に似ているように思います。

 ところが犯罪者の人数が増え、警察官の力が弱くなり、さらには警察官そのものの中に犯罪者が入り込んできたりすると話がやっかいになり、治安が乱れて国が国として成りたたなくなる(病気になる)可能性も出てきます。

 体で言うと犯罪者がガン細胞であり、警察官が免疫や放射線療法になりますが、これだけでは勢いをくい止められないときもあります。その場合は、一時的に警察官の数を増やすとか(免疫を強くする)、外部から新たにより強固に武装をした軍隊や狙撃手を呼ぶ(抗ガン剤や分子標的薬)という処置が必要になるわけです。

 というわけで、悪性リンパ腫の治療は、基本的に以下の5つに分類されます。

@ 経過観察
A 放射線療法
B 抗ガン剤
C 分子標的薬
D 造血幹細胞移植

 この中のどれを選ぶかは、主治医との相談になるはずですが、それぞれの悪性リンパ腫がどの段階なのかによって、治療方針が決まっていきます。


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