結局抗ガン剤の治療というのは、抗ガン剤が持っている毒性を利用して
@ リンパ腫細胞を殲滅する
A 骨髄抑制をG-CSF等を使ってコントロールし、感染症にかかるのを防ぐ
B 副作用をなんとか克服し、それによって体がダメージを受けないようにする
という三つの要素をいかにうまく組み合わせて、基本的には@の効果が最もよく現れる方法を探す、と言うのが化学療法の根幹かなと思えます。
しかし困るのは、前ページにも書きましたが、一つはリンパ腫細胞を殲滅すれば、正常細胞にも影響が出ると言うことで、この二つを切り離せないことです。
もう一つは治療後にそのリンパ腫細胞がどのくらい残っているのかと言うことを、数字で表すことが出来ず、各種の検査によって類推するしかないということです。
私自身もここまでまとめてきて、抗ガン剤を繰り返す治療(クール)はかけ算で表せるという前提で話を進めていますが、実際には引き算の要素も含んでいるのかもしれないなと思うようになってきました。そうでないと、寛解に至り、その後の再発も起きない、と言うことをうまく説明できません。
(もちろん治療後に免疫系が大活躍したという説明は出来ますが、抗ガン剤治療によって免疫系もダメージを受けると考えると、そう簡単に納得できません)
そこで、通常化学療法は3〜6クール行われるようですので、その場合どの程度残存細胞が残るのかと言うことを単純にエクセルで計算してみました。上段が引き算の例、下段がかけ算です。
要するに抗ガン剤がリンパ腫細胞の50%を殲滅すると、引き算なら第2クールを終えれば、理論上寛解します。例え抗ガン剤が20%しかリンパ腫細胞を殲滅できなくても5回繰り返せば寛解に至るということです。
一方下段は、残存細胞をかけ算で求めています。例えば80%の例では、第1クールで80%のリンパ腫細胞が消えますので残りは20%です。第2クールでは、その中の80%が消えますので(これをかけ算と表現しています)残りは20%の中の20%が生き残るので4%となります。
この場合抗ガン剤がどれほど強力だろうと、必ず残存細胞があり、その場合最後の残存細胞を駆逐するのは自分自身の免疫力の可能性が高いと言うことになります。
実際の抗ガン剤の殲滅%が分からないので困るのですが、抗ガン剤が細胞分裂時のみに効果を発揮すると考えると、殲滅%は50%以上にはならないような気もします。だとすると再発の可能性はひじょうに高いと言えそうです。
しかし実際には寛解となり、再発もしない患者さんもいるわけですから、その場合の抗ガン剤の効力としては、引き算的な要素が強いのかなとも思えます。
ただし実際には繰り返すほど抗ガン剤の効力は失われるということが医師側の共通見解のようですから、例え引き算であっても、実際には徐々にその効果が弱くなり、残存細胞が残ることになり再発するのかなとも思え、考え方としては引き算の方がしっくりするような気がしてきました。
殲滅% | 第1クール | 第2クール | 第3クール | 第4クール | 第5クール | 第6クール |
50% | 50.00 | 0.00 | ||||
40% | 60.00 | 20.00 | 0.00 | |||
30% | 70.00 | 40.00 | 10.00 | 0.00 | ||
20% | 80.00 | 60.00 | 40.00 | 20.00 | 0.00 | |
10% | 90.00 | 80.00 | 70.00 | 60.00 | 50.00 | 40.00 |
90% | 10.00 | 1.00 | 0.10 | 0.01 | 0.001 | 0.0001 |
80% | 20.00 | 4.00 | 0.80 | 0.16 | 0.03 | 0.01 |
70% | 30.00 | 9.00 | 2.70 | 0.81 | 0.24 | 0.07 |
60% | 40.00 | 16.00 | 6.40 | 2.56 | 1.02 | 0.41 |
50% | 50.00 | 25.00 | 12.50 | 6.25 | 3.13 | 1.56 |
40% | 60.00 | 36.00 | 21.60 | 12.96 | 7.78 | 4.67 |
30% | 70.00 | 49.00 | 34.30 | 24.01 | 16.81 | 11.76 |