リツキサンはリンパ腫細胞であるBリンパ球が表面に持っているCD20というタンパク質と結合しますが、その作用について様々な文書を読んでみると、、リツキサンそのものがこの結合によりリンパ腫細胞を破壊または無毒化するのではなく、そうやって結合した結果、体内の免疫細胞がそれを異物ととらえ、破壊するというイメージが正しいようです。
ということは、リツキサンがいくらその能力を効果的に発揮してリンパ腫細胞を見つけ出し結合しても、その近くに免疫細胞がいなければ、それを駆逐する作用は生まれないということになります。従って、もし免疫系統が充分な活動をしていなければ、リツキサンの効果も上がらないという結論になります。
であるなら、大量の抗ガン剤を投与する化学療法では、体内の免疫系もその抗ガン剤により影響を受けている可能性がありますから、リツキサンを投与するタイミングというのは慎重に考えないといけないはずです。
そこで具体的にR-CHOP療法において、どの様な日程で投与が行われているかを調べてみると、予想通り以下のように1クールの初日に投与される日程になっています。(横軸の数字は日数です)
薬剤 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
リツキサン | ○ | ||||||
アドリアシン | ○ | ||||||
オンコビン | ○ | ||||||
エンドキサン | ○ | ||||||
ブレドニン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ただし腫瘍量が多いと判断された場合は、第1クールだけはCHOPの投与を先に行い、全体としての腫瘍量を減らした上でリツキサン投与を行うこともあるようです。しかしこの場合も2回目以降は、上記の表のような日程で投与が行われます。
つまり抗ガン剤を投与する前なら、免疫系がまだしっかりと活躍できているはずですから、異物(CD20を持つリンパ球と結びついたリツキサンのことです)を認識し、それを駆逐する作用も活発に行われるだろうと想定しているのではないかと思われます。
その後第一クールが終わり、その結果、リンパ腫細胞のどの程度の影響があったかを血液検査等で確認し、副作用を何とかコントロールし、白血球等が再び回復し、免疫系のダメージもなくなったと思われるころ、第2クールが始まるわけですが、当然最初にリツキサンを投与し、回復した免疫系の働きでリンパ腫細胞をたたく、と言うことになるのかなと思えます。
しかし、このように考えをすすめていくと、いわゆる大量化学療法を実施した後は、その影響が長期間体内に残りますから、その間免疫系の働きはかなり制限されているため、リツキサンの効力は発揮しずらいということになります。
我が家の連れの場合、最初の治療でかなり強い化学療法を行い、いったんは寛解に至ったものの、手足のしびれや運動機能の減退等の副作用はかなり長期間残っていました。
その間見かけの白血球数は少しずつ回復していましたが、本当の意味で抗ガン剤によって影響を受けた免疫系が元のように修復されたとは思えません。と言うことは、退院後リツキサンの通院治療を行っても、その効果が100%発揮されない可能性があり、その場合再発と言う可能性も高まるなと思えてきました。