ここまでのまとめをします。(以下私自身が化学療法に対して考えている内容です)
化学療法は
@ リンパ腫細胞を壊滅させ、寛解状態にもっていき、さらに5年経っても再発がないこと
を目標にしますが、一方その欠点は、毒性の強い薬剤を使うため、正常細胞まで影響を受けてしまいます。その結果
1) 骨髄抑制が強く表れ、白血球数が著しく減少する。場合によってはほぼ0になる。
@ そのため感染症の危険が増す
A そこで、一時的に骨髄の血球を増やすC−CSFを投与し、早期に血球数を回復させる
B この時、これまで書きませんでしたが、骨髄への負担が増すので、背中や腰に痛みが出ることがある
C 赤血球や血小板の減少に対しては輸血で対処する
2) 激しい副作用が出る
@ 嘔吐には制吐剤が用いられる
A 便秘や下痢に対して、それぞれの薬が投与される
B 歯痛、口内炎に対して、鎮痛剤やうがい薬等が投与される
C 脱毛に関しては、治療終了後に自然に生えてくるのでそれまで我慢
D 筋力低下やしびれ等の神経症状も、治療終了後に徐々に回復するので我慢
というような、過酷な状態を強いられます。また
@ 肝臓や腎臓等、各種内臓への影響も大きいので、随時血液検査を行い、その数値によって必要な薬剤を投与する
というような、様々な負の要素(いわゆる患者のQOLを低下させる要素)があるので、それらとのバランスを医療側も患者側(家族も含めて)も常に考えなくてはいけません。
従って
@ 無闇に強い化学療法は、リンパ腫細胞に効果はあるものの、その毒性も強くなる
A その結果悪性リンパ腫細胞は駆逐できても、他の症状で生存が脅かされる可能性が大きくなる
B 一方弱い化学療法では、リンパ腫細胞の勢いが薬剤の駆逐力を上回り、症状が悪化する可能性がある
C それらのちょうと中間値、すなわち強い化学療法でありながら、副作用が等が少なく、比較的抗ガン効果の高い方法
は、現在の所標準治療となっているCHOP療法である
D 生存曲線等をみると、今の所CHOP療法を著しく上回る化学療法は見つかっていない
E 唯一リンパ腫細胞がB細胞の場合は、リツキサン(リツキシマブ)が高い効果を発揮することが分かっている
という結論になります。
そこであとは、この化学療法をどのくらいの量で、どのくらいの期間実施するかが大きな問題で
@ 少なければリンパ腫細胞の勢いが増し
A 多ければ患者さんの体力が低下しますので
予定のクール数はあっても、それはあくまで予定であるということを患者さんや家族も知っておいた方がよいように思います。
というのも、医師はあくまでリンパ腫細胞が消えることや寛解だけを目標にして、副作用による患者さんの体力低下やQOLの低下には対処療法で目をつむる、と言う傾向がなきにしもあらずだと思えるからです。