強い化学療法の選択の是非

 悪性リンパ腫について改めて自分なりにまとめてきた過程で、やはり気になるのは、悪性リンパ腫が発症する人としない人の違い、及び発症後寛解する人と再発する人の違いです。

 本屋さんに行って、悪性リンパ腫や化学療法、そして様々な代替療法についての本を読んでいると、健康な人でも毎日数千個のガン細胞が体のあちこちに生まれていると書かれています。

 全身の細胞数である60兆個に較べるとわずかな量にも思えますが、単純に仮に毎日5000個生まれていると考えると1年では200万個近くになりますし、しかもこれら一つ一つはどんどん増殖する能力を持っているわけですから侮れません。

 とは言っても、全身の細胞数が60兆個ですから、仮に体重を60kgとすれば、1kgで1兆個、1gで10億個となり、1mg(ミリグラム:1gの1000分の1)で10万個となり、200万個は約0.02gの重さに過ぎないとも考えられます。

 ただし上に書いたように、この0.02gのガン細胞の一部が、ひたすら増殖を続けていくとその数は莫大な数値になります。

 たった1個の細胞が2日で2個になり、それがまた分裂を繰り返していくと考えると1年間では2倍に分裂する回数が約180回あるわけで、それは天文学的な大きさの数字(2の180乗)になるはずです。

 しかし実際には、ほとんどの人はガンという病気を発症せずに、その他の病気やいわゆる老衰で天寿を全うするわけです。

 ということは、例え毎日数千個のガン細胞が生まれても、それらのほとんど、ではなくすべては、生まれて直ぐに壊れてしまう(自然死:アポトーシス)か、さもなくば他の細胞によって壊されてしまう(免疫)という事になります。

 ところがストレス等、何らかの刺激因子により一時的にガン細胞の産生が増加し、しかもそれらの細胞にアポトーシス機能が充分に発揮されず、さらに免疫の網の目をくぐり抜ける細胞があると、それがガンになるわけです。

 すなわち(ガン細胞の生産力)>(アポトーシス+免疫)という式で表すことが出来、これがガン発症の基本になるような気がします。

 次にこのガン細胞に対して、化学療法を行うとはどうゆうことかというと、薬剤の力で一時的にガン細胞をやっつけるという事になります。すなわち右辺に援軍がつくわけです。従って

(ガン細胞の生産力)<(アポトーシス+免疫+化学療法)

という式になるわけですが、ここで化学療法を行うことによって様々な悪影響が出る事を考慮しないといけません。すなわち骨髄抑制や副作用、さらには場合によっては新たなガン細胞が生まれる可能性が指摘されているわけです。

 従って先ほどの式の左辺は

(ガン細胞の生産力+新たなガン細胞の生産力+骨髄抑制+副作用)、となり、右辺は変化しませんので結局

(ガン細胞の生産力+新たなガン細胞の生産力+骨髄抑制+副作用)(アポトーシス+免疫+化学療法)の力関係になります。

 これで右辺の力が大きければ寛解に至ると言うことになるわけですが、やっかいなことに右辺の化学療法を強めれば、左辺の(新たなガン細胞の生産力+骨髄抑制+副作用)という部分も大きくなるので、右辺のアポトーシス+免疫の力が弱くなる可能性があり、結局強い化学療法では、強くした分が相殺されるという結果になるのだと思います。


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