リンパ腫細胞がどこで発生したか

 抗ガン剤にしてもリツキサンにしても同じだと思うのですが、基本的には発生しているリンパ腫細胞の数の何百倍、何千倍と言った数の分子が体内に投与されているのだと思います。

 だったらもっと投与量を下げられるのではという気にもなりますが、リンパ腫細胞が体中に万遍なく散らばり、そこに抗ガン剤やリツキサンがすべて均等に拡がっていくわけではないだろうということは容易に想像が出来ます。

 その意味では、副作用等で体の負担にならないような最大限の量を投与するというのが原則なのかもしれませんが、例えば具体的に体表面積1m2あたり何mgという投与量をどのような基準で計算しているのかは、ネットで少し調べてみましたがよく分かりませんでした。

 まあたぶんこれだと思われる計算式のようなものがあって、後は実際に投与された場合の患者さんの反応を見たりして決めているのかなと思えます。

 というわけで投与量についてはこれ以上踏み込みません。計算上はリンパ腫細胞数を遥かに上回る分子数のリツキサンが投与されているという結論で終わりたいと思います。

 で、問題なのはそれほどまでの量を投与しても全員が治るわけではないのですから、前ページに書いたように、これはCD20というタンパク質を持たない段階でリンパ腫細胞が出来ている可能性があると考えられます。

 私の連れは悪性リンパ腫と診断されてから、当初体力が落ちていたので、最初は当座のしのぎとしてCHOP療法を半量で行いました。薬に対する反応は良かったというのが主治医の見解でしたが、すぐにリンパ腫細胞が増えてきたのも事実です。

 その状況を見て主治医は「だいぶ質の悪いリンパ腫細胞です」というようなコメントをしてくれましたが、この意味は当時よく分かりませんでした。

 今考えるとこの意味は

@ そもそも抗ガン剤に対して強い耐性をもったリンパ腫細胞だった

A 抗ガン剤に対してリンパ腫細胞自身がすぐにその薬剤に耐性を持つような柔軟性があった

B 抗ガン剤によって、新たなDNAを持つリンパ腫細胞が生まれてしまった

C 抗ガン剤の効きにくい場所でリンパ腫細胞が増殖している

というような理由が考えられますが、最初のCHOP療法の効果はかなりあったという事ですから、@は除外できそうです。

 またBは、例えすぐに新たなリンパ腫細胞が生まれたとしても、それがすぐに1週間や2週間で増殖をして検査で感知できるまでには至らないような気がします。

 と言うことは、残る可能性はAまたはCであり、もしリンパ腫細胞が抗ガン剤に対して柔軟に対応できるようならば、化学療法の効果はあまり期待できないことになります。

 しかしその後行われた化学療法で(強いものでしたが)、いったんは寛解に至ったわけですので、個人的に主治医が言った「質が悪いリンパ腫細胞」とは、Cの可能性が高いのかなと思えます。

 治療中の患者さんがこの文章を読んで悲観的になってもらっては困るのですが、質が悪いというのは、リツキサンの効き具合からも考えて、リンパ球が出来る直前の段階(CD20が出来ていない)でリンパ腫細胞が生まれていて、しかもそれは骨髄中等の抗ガン剤が入りにくい場所で発生したからではないかなと思えるようになってきました。


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