私の結論は、「総合力で闘う」です

 化学療法の利点と欠点についてまとめ、それについて自分なりの感想をまとめてきたつもりですが、「じゃあ結局の所どうすればいいのか?」という部分がなんとも曖昧になってしまったなと感じています。

 ただもう一度しつこく書かせてもらいますが、結局何回も書いている式の力関係で治療の成果が決まることは間違いないように思います。

 式がダラダラと長いので、ちょっと違った書き方で表すと

体に対して負の要因 体にとって良いと思われるもの
・ リンパ腫細胞の増殖力
・ 化学療法に耐性を持ったリンパ腫細胞の増殖力
・ 強い化学療法によって新たに生じる可能性のある
リンパ腫細胞の増殖力
・ 化学療法による骨髄抑制
・ 化学療法による副作用
・ 悪い意味でのストレス

・ 体力
・ 細胞が持っているアポトーシス機能
・ 体がもっている免疫
・ 化学療法
・ リツキサン等の分子標的薬
・ 精神的な支え
・ 様々な癒し効果


 要は左側の様々な負の要因に対して、体自体が持っている抵抗力とそれを補う化学療法分子標的薬がうまく組み合わされば右側が大きなパワーになるわけです。

 しかし何回も書いているように化学療法の効果を高めようとすると、左辺の骨髄抑制や副作用が大きくなり、右辺のアポートーシスや免疫機能の衰退という負の面も強く出てしまうと言うことが問題なわけです。

 しかしながら悪性リンパ腫という病気を治すために、特に初期段階のものを除けば、化学療法は有効な治療手段であることが様々な臨床例で証明されているわけですから、医者が「現状では化学療法が必要な段階です」と決めれば、患者さん側はそれを受け入れざるを得ません。

 ではその上で患者さんが出来ることは何か、ということになると、それは先ず出来る限り体力を維持することだと思います。

 しかしこれは言うのは簡単ですが実行は大変厳しいのも事実です。

 私の連れは大学病院に入院後すぐに個室に入れられ、輸血や薬剤投与のための「中心静脈カテーテル」(略してCV)という細い管を血管内に入れられ、様々な薬剤をそこから投与されていましたから、体力温存といっても動くわけにもいかず、結局はベッドの上で寝たり起きたりするだけの生活になってしまいました。

 体力維持というのは、基本的に「食べる」「運動する」「寝る」ということが基本になるかと思いますが、「食べる」方は病院食で自分の好みのものを食べられず、運動も出来ない、となるとなかなか体力維持も厳しいです。

 しかも化学療法が始まると味覚障害や嘔吐感でますます食べ物がおいしく感じられなくなり、運動が出来ない上に副作用の神経障害も出てくると、さらにストレスがたまります。

 唯一寝ることだけが体力維持に役立つわけですが、これとてCVの管をつけたまま寝るわけですから、最初の内はなかなか熟睡というわけにもいかないと思います。

 しかも化学療法の投与中は数時間毎に検温等もあり、なかなかゆっくり寝られないというのが実際の状況だと思います。

 しかし体力が落ちればそれだけ薬の副作用もきつく感じられ、何よりアポトーシスや免疫力も弱まると思われますので、患者さん本人や病院側はもちろん、患者さんの家族もあらゆる手段を通して、体力を維持しストレスがたまらないような工夫をすべきだと思います。

 具体的には、ほんの少しの距離でも病室の外に出て一緒に歩くとか、病室外で話をするとか、医師の了承を受けた上でおいしいものを持参し一緒に食べるとか、飲むとかといったことです。要するにベッドの上での寝起きだけにならないようにした方がよいということです。

 さらにそれでも体力を維持するのは難しいと思いますので、その欠けた分は、右辺の精神的な支えや癒しで補うとが大事なのかなと思います。要は出来ることをすべてやり、総合力で病気と闘うということだと思います。


表紙に戻る 化学療法