ピルビン酸脱水素酵素
乳酸脱水素酵素のはたらきを
何が調節しているのか

 次に、ではガン細胞はどうやってピルビン酸脱水素酵素の働きを抑え、乳酸脱水素酵素の働きを活性化しているのかという疑問が生じます。

 いろいろと調べるとこの二つはシーソーのように動いて、細胞内でうまくエネルギーが生まれるように調節していることが分かってきました。

 ではいったいどんな物質がこのシーソーを調節しているのか?

 ネットの情報では、そのメカニズムを無視して、だから「酸素を補給してミトコンドリアのはたらきを活性化すれば良い」、というような結論を導いているサイトもあります。

 しかしガン細胞内部でどのような反応が起きているか分からない段階で、単に深呼吸を繰り返しても徒労に終わる可能性がありますので、これについても追究しみました。

 その結果分かったことが一つあります。それはガン細胞では低酸素状態になると、「低酸素誘導因子」(HIF−1:Hypoxia Inducible Factor)と呼ばれる物質が分泌されるということです。

 この低酸素誘導因子が、上記の二つの酵素の働きを調節していると考えて良さそうです。その働きはこんな感じになると思います。
 

低酸素状態
低酸素誘導因子
ピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性化
乳酸脱水素酵素の活性化 ピルビン酸脱水素酵素の抑制
乳酸 クエン酸回路


 ここで、また新しくピルビン酸脱水素酵素キナーゼという物質が出てきましたが、これがはたらくことによってピルビン酸脱水素酵素のはたらきが抑制されるという物質です。

 通常この流れは激しい運動したときに起きるのだと思いますが、どうやらガン細胞ではこの低酸素誘導因子という物質が常に活発に活動していることにより、ピルビン酸脱水素酵素のはたらきが抑制されるみたいです。

 ということは、このはたらきをなんとかしない限り、外からいくら酸素を供給してもガン細胞はなくならない(細胞死に至らない)ということになります。つまり普通の状態でいくら深呼吸や酸素吸入をしても、残念ながらあまり効果がないという結論になりそうです。

 しかしではなぜ常に低酸素状態なのか、ということがまた疑問として浮かび上がります。さらに、この低酸素誘導因子が問題なら、なんとかこの物質を抑制する方法はないのかということも気になります。 


表紙に戻る さらに考えると 酸素の供給