免疫系の衰えとガン細胞の成長

前ページからの続きです。

B 免疫系の弱体化またはリンパ球の供給が不十分について

 これについては異論はありません。免疫系が異常な細胞を感知し、それをよってたかって破壊するという使命を帯びている以上、免疫系が弱っていれば、ガン細胞の増殖環境は整うと考えられます。

 事実日本は高齢化社会に突入すると共にガン患者さんの数が増加しています。この原因を考えると

1) 高齢化による遺伝子のミスコピーの頻度が高まった

2) 高齢化による骨髄でのリンパ球の生産が減っている

の2点が考えられます。

 ただし、免疫というのは異物に対して働く、ということが大前提になっていますから、その意味では自分の体内で、自分が持っている栄養分を使って発生したガン細胞を異物と認識できるのかどうかというのは大きな問題であるように思います。
 
 今後研究が進んで、ガン細胞が発生した瞬間に、その場所にリンパ球が集まり、そのガン細胞を分解、消滅させたという状況が、電子顕微鏡等で視認できるまでは、免疫さえ充分ならがんは治るという安易な言い方は出来ないと思います。

 なお、我が家の連れのB細胞悪性リンパ腫の場合もそうですが、通常ではなかなか免疫細胞が悪性リンパ腫細胞を認識することは難しいので、リツキサンがリンパ腫細胞の表面にある特別な形に結合しやすいことを利用して、人工的にリンパ腫細胞を異物に仕立て上げ、免疫によって駆逐するという方法をとっているわけです。

 このことは、裏を返すと通常の免疫細胞が悪性リンパ腫となったB細胞を区別するのが難しいという証明にもなっているような気がします。

 次に、上記項目の2)ですが、骨髄や胸腺中のリンパ球生産能力は年齢と共に下降することが分かっていますので、生産数の減少は避けられないのかなと思っています。

 しかしその上で、若い人でも発症するという現実を考えると、供給量が充分であっても、リンパ球(免疫細胞)がガン細胞近辺までたどり着きにくい状態であるとも考えられます。

 つまりリンパ球というのは、血管内やリンパ管内、リンパ節内、組織液内に分布していると考えられますが、低酸素状態になっているようなガン細胞周辺では、血管の形成が不十分で組織液も不足していると考えられますので、リンパ球もガン細胞近辺まで近づけないということです。(個人的な見解です)

 その結果いくらリンパ球が豊富に存在しても、その免疫力を充分に発揮できないということになりそうです。我が家の連れのように、40代という若さでこの病気を発症し重症化した場合は、こういった状況が一番可能性が高いなと思えます。


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