冬虫夏草

 面白い名前の物質だなと思います。ウィキペディアで調べてみると「とうちゅうかそう」「ふゆむしなつくさ」というような読みであることが分かりました。またそこには菌類(キノコの一種)であると書かれています。

 正確な種別としては、チベット高原やヒマラヤ地方の高山地帯でトンネルを掘って暮らす大柄のコウモリガ科の蛾の幼虫に寄生する菌類ですが、外観を見ると植物のようにも見えます。

 幼虫そのものは地中で暮らしていて、この菌類が寄生して地表に顔を出しても、幼虫の形は変わらないので、見かけは幼虫の体の一部から植物が生えたような恰好になります。

 中国ではこれらの生物を幼虫をつけたまま採集し乾燥したものを、漢方の生薬としているそうです。効能は健肺、強壮、抗ガン効果があると言われているようですが、ウィキペディアにその理由は書かれていません。

 成分ですが、抗ガン効果に関係のありそうな名称はDーマンニトール、コルジセピン、エルゴステロール、βグルカンというようなもののようですが、βグルカン以外はどれも初めて聞く名前です。

 また一般的に虫の死骸から発生するような菌類はかなり多種類になるようで、どれが本当の意味での冬虫夏草なのか判断するのは難しそうです。その中で、本物として扱われているものが、上記コウモリガ科の幼虫に寄生するものだということです。

 では何故これが抗ガン効果を有するのかと言うことですが、キノコの一種であると考えれば、すでに一度まとめている「アガリクス」と同じような考え方、すなわち成分として含まれているβグルカン等がリンパ球に刺激を与えて、増殖を促すのかなとと思えます。

 というわけで、もしかすると本当に効果があるのかと思いつつ、いろいろなネットの情報で体験談というのを見ていると、良くなったという報告に「糖尿病」「耳鳴り」「ガン」「胃潰瘍」「肺気腫」「味覚障害」「肝障害」「リウマチ」「不妊症」「心臓病」「高血圧」「アレルギー」「喘息」「結核」「不眠症」「精力減退」とおよそ何にでも効くということが書かれていて、これを読んで逆にこれは変だ、と思うようになりました。

 さらに漢方の生薬として扱われていることは分かりましたが、生薬というのは要するに漢方薬を構成している物質のことであって、漢方薬とは色々な生薬を組み合わせたものだということです。

 つまり漢方薬として何らかの薬に冬虫夏草が使われることはあっても、それを単独で漢方薬とすることはないようです。逆に言うと単独で販売されているものが健康食品という分類になります。

 そしてその健康食品の効能が上記のように多岐にわたるものであると書いてあるわけですから、普通なら「これはちょっと怪しい」と判断せざるを得ません。

 というのも、もしそんな素晴らしい夢のような、どんな病気にも効果があるような健康食品が存在したら、それこそ医薬品業界はそれを元にした製品をこぞって販売しているはずです。

 このキノコ?自体が、蛾の幼虫から生じるという神秘性があるため、あたかも秘薬のようなイメージとなっているような気がします。

 ただ何回か書いているように、効く効かないと言う判断はひじょうに難しいと思っています。従って単純に、効かないと断言する事も出来ないように思います。


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