キノコについて

 キノコというものは独特の雰囲気を感じます。当たり前ですが、通常の野菜とは形も色も臭いも違う。では見かけだけでなく、実態として何が違っていて、生物学の分類ではどのように扱われているのか?

 アガリクスや冬虫夏草もキノコの一種ですが、日常的に食べるシイタケやエノキダケと違い、なんとなく神秘的な印象があります。この神秘性が健康食品になる理由の一つかなと思いますが、とりあえず先ず手元にある高校生向けの生物の資料を見て、通常の植物との違いを調べて見ました。

 先ず生物の分類ですが、実はこれすら境界線上にあるような生物がいるため、はっきりと区分けされているわけではありません。ただ一般的な分類としては、5つの生物界に分かれます。(界というのは生物を分類するときの一番おおもとの分類群です。

 それによれば、、現在の地球上の生物群は五つに分類されるようで、最も単純な生物界が「原核生物界」と呼ばれています。原核生物とは、細胞の中に核膜が存在しないため、染色体が剥き出しになっている生物です。具体的には細菌やラン藻といった生物がこれに該当します。

 一方染色体が細胞内の核の中に格納されている生物を真核生物と呼んでいて、これがさらに四つに分かれます。先ず生物の教科書で最初に説明されるゾウリムシに代表される単細胞生物ですが、これを原生生物界と呼んでいます。

 そしてそれらがもう少し進化し多細胞生物になり、そこで植物、動物、菌類に分かれます。キノコはこの中の菌類に分類されます。

 ちなみに菌類の増殖は菌糸で行われますので、動物や植物とはまったく違う増え方をします。以上を図で書くと以下のようになります。

真核生物 植物界 菌界 動物界
原生生物界
原核生物 原核生物界


 さらに面白いことに菌界の中にはいわゆるキノコとカビの両方が入っています。視覚的には片方はいわゆるキノコの形をしていて、もう片方は無定型で平面的にはびこるイメージがありますが、増え方に注目すると基本的に同じものであるといえます。

 また人間のような動物は、体内で合成できるものに限度があるため、植物を摂取することによって、自分で作れないものを外部から補い、それを呼吸による酸素で得たエネルギーを使って加工するわけです。

 さらに植物は光合成によって、光と大気中の二酸化炭素や根からの水分や養分を使って、体物質を合成し、生命エネルギーを得ています。

 では菌界の中のキノコはどうやって体を作っているのか?調べてみると、当たり前ですが光合成は行っていないし、食べる口を持っているわけではありませんので、当然菌糸によって栄養を得るわけです。

 この菌糸が栄養分を取りこみやすい相手が植物であるため、朽ち木や落ち葉、木の葉等が多い場所でキノコが成長しやすいということです。

 というわけで、キノコの体は動物や植物とは違った方法で栄養分を取り入れて作っているため、通常の食べ物とはちょっと違う成分が含まれているということになり、これが健康食品として注目される理由になるのだと思います。ただしその成分が人間の生理にとって有用なものかどうかは別問題です。


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