リツキサンという薬について

2016.7.28

 抗がん剤を投与すると、ともかく細胞分裂を活発に行っている細胞の増殖が阻害されます。腫瘍細胞と言われているものは、通常の細胞よりその増殖の勢いが激しいので、こういった薬剤が効果を発揮すると考えて良さそうです。

 しかし前ページに書いたように、正常な細胞の分裂も阻害しますから、様々な副作用が生じることになります。そこで、なんとか腫瘍細胞だけを狙い撃ちに出来ないかという発想が生まれます。

 そうやってできたのがリツキサンだと思われますが、その前段階の知識として知っておいたほうが良いことがあります。

 そもそも通常の人体内であっても、ガン細胞の初期細胞が毎日のように生まれていると言われています。それが生じる主な理由は遺伝子のミスコピーのようですが、加齢によってコピー回数が増えるとミスも増えます。

 すなわち高齢化によってがんになる人が増えるという事です。しかし年をとってもがんにならない人もいます。なぜなのか。

 通常こういった異常な細胞は、生まれてもすぐに自分自身で「自分は異常な細胞だ」ということを認識し、その段階でアポトーシス(自然死)という現象が起きるようです。

 ところが似たような細胞がいくつも生じるうちにアポトーシスをすり抜ける細胞が表れます。これらの細胞はその後腫瘍細胞として活動を始める可能性があるわけですが、そこに登場するのが我々自身が持っている免疫系細胞です。

 この細胞にもいくつか種類があって、異常な細胞を見つける役割と、実際にそれを破壊する役割をもつ細胞があるようです。

 というわけで、これらの細胞が正常に活動していると、異常な細胞が存在しても、すぐにそれを探知し、破壊してしまうという事になります。

 ところが、腫瘍細胞の中には、さらにその上手を行くものがいて、例えば探知しようとする細胞をかく乱するとか、破壊しようとする細胞の増殖を抑え込むと言った作用を持つ場合があります。

 それによって腫瘍細胞が増殖する環境を整えることができるわけで、それを我々は「がんになってしまった」と捉えることになります。

 ここからリツキサンの話になるのですが、この時「腫瘍細胞はこれだよ」と探知しやすい目印をつけてあげれば、その段階で免疫系が活躍するのが容易になります。

 もちろん目印をつけても、腫瘍細胞を破壊する免疫系の細胞がかく乱されていたり弱っていたりすると、単に目印を付けただけに終わってしまいますので、この薬剤は患者さんに体力(免疫力)がある状態で使用しないといけないのだろうなと想像しています。

 リツキサンが分子標的薬と呼ばれている理由は、腫瘍細胞の表面にあらわれる特定の分子を見つけ、そこにリツキサンが結合することによって、免疫系細胞が探知しやすい状態にするということです。

 理由ですが、リツキサンが結合すると腫瘍細胞全体の形が変化しますので、それまで探知を逃れてカモフラージュしていた姿が、異物としてとらえられるようになるので、そこへ免疫系の細胞が押し寄せて破壊するという流れなのだと解釈しています。
 
 という事は、リツキサンそのものが腫瘍細胞を破壊するわけではなく、結局は自身の免疫系の働きをアシストする薬剤であるといえそうです。

 ちなみにここにまとめなおした内容は、すでに他のページで書いていることを思い出しながら書きなおしているだけです。

 ただ次の段階の薬剤であるオプジーボの作用する根拠を説明するためにまとめなおしました。


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