6時に、私の母親、息子、Yの妹さんが病院に集まった。母親に息子の相手を頼み、私と妹さんが主治医の話を聞く。
主治医の話。
「病名は悪性リンパ腫です。程度は不明(悪性リンパ腫の段階は四段階)です。この病院では治療できる設備がありませんので、転院するしかありません」
「やはりそうなのか」という落胆の気持ちを抑えつつ、私から最初に質問。
「悪性リンパ腫とはどのような病気ですか」
「悪性リンパ腫とはリンパ球細胞の異常です。大きく分けて二種類ありますが、この場合は非ホジキン型です」
こう言われても、この段階ではこの病気に対する知識が不足しているため、ほとんど理解できない。「リンパ球とは?」「ホジキンとは?」
私が悩んでいると、今度は妹さんから
「原因は何ですか。姉は食べ物にはひじょうに神経を使って生活しています。思い当たることがありません」
患者の家族として当然の質問だが、答えは煮え切らない。
「病気の原因は現代科学では不明です。また左胸のレントゲンによる影も、リンパ腫が転移したものだと思われます。判断の根拠は生検の結果と、腫瘍細胞マーカーの数値です」
私から、インターネットの知識を思い浮かべながら質問。
「どのような治療が行われますか」
「今後の治療は抗がん剤による化学療法か、放射線療法で、これらの療法で行う限り腫瘍部位の摘出は行いません。また検査の結果、新たに肋骨の一部にも転移の可能性があることが分かりました」
新たな可能性に再度愕然としながらも、質問を続ける。
「転院先の病院はどのようなところが対象になりますか」
「病院は血液腫瘍内科のある病院になります。幸い近くに該当する病院がありますが、入院の可否は、ベッドの空き具合とYさんの症状を診て、先方の医師が判断して決まります」
「ということは、その病院で入院を拒否されることもありますか」
「当然ベッドの空き具合等で拒否されることはあります。それに備えていくつかの候補も考えています」
「病院が決まった場合の移送方法は、どのように行われますか」
「移送方法は転院決定時に検討します」
「本人への告知はどのように行われますか」
「御本人への告知は、家族の了解のもと行います。これからさらに細かい検査をしなければなりませんが、現在腎臓の数値が悪いので、造影剤を入れることが出来ません。場合によっては透析をしながら造影剤を入れざるを得ないかもしれません」
「今日の病状はどうですか」
「カルシウム値は11.5で、そこからなかなか下がりません。クレアチニンは3.5で、これも1以下には程遠い状態です。」
「咳には咳止めを処方しています。また生理食塩水で体液を増やし、アレディア(高カルシウム症治療薬)を服用しながら、おしっこの形でカルシウムを排出させています。」
「クレアニチンはカルシウム値が下がれば改善するはずです。発熱の原因は風邪と腫瘍細胞によるものです」
という説明だった。