悪性リンパ腫とウイルスの関係

 そもそも悪性リンパ腫を発症したということは、造血幹細胞内またはリンパ球になる前のリンパ芽球、さらにリンパ球としての成熟過程の中で、何らかの要因により遺伝子が変質して、増殖が止まらなくなったということです。

 ここで遺伝子というのは、それぞれの段階のリンパ球の中の核内に入っている、いわゆる螺旋状になったDNAを意味しています。つまり、これらが損傷するためにどのような要因が考えられるかというのが、悪性リンパ腫の原因を考える上での重要なポイントになりそうです。

 で前ページの内容ですが、EBウイルスというのがその原因の一つとして考えられていると書きました。だとすると、はたしてウイルスはこういった染色体というか遺伝子に影響を与える力があるのかどうかを調べる必要があるなと感じました。(他にも原因は考えられそうですが、先ず代表例としてウイルス感染を考えています)

 そこで自分自身の勉強のためにも、先ずウイルスとはどんなものであるかということから調べてみました。これが分かった段階で、次はEBウイルスについて調べてみるつもりです。

 というわけでウイルスですが、よく聞くのは「インフルエンザウイルス」だと思います。他にも「ウイルス性肝炎」とか「アデノウイルス」とか、いわゆる牛の「BSE」だとか「はしか」「おたふくかぜ」「風疹」「水疱瘡」といった病気が、ウイルスによるものとしてよく知られています。

 問題はその定義ですが、ウイルスは生体に影響を与えて増殖しますが、現代生物学では「生物ではない」という定義になっています。その根拠は、生物特有の細胞という組織がないということによるものです。また自分だけでは増殖できない、と言うのも大きな特徴です。(細胞というのは細胞膜という膜に囲まれている袋状の空間ですが、ウイルスの場合は、その入れ物がタンパク質になっているみたいです)

 ではどうやって自分自身を増やすのかというと、他の生物の細胞の代謝機能を利用して増殖すると言うことです。その利用方法ですが、当然ながら最初は細胞表面にくっつくことから始まります。

 なんだか目に見えない細胞レベルの話で分かりにくいのですが、細胞の大きさは2〜30(μm)(ミクロンまたはマイクロメートル)で、ウイルスの大きさはその100〜1000分の1ぐらいだそうです。(1ミクロンは1mmの1000分の1ぐらいです)

 仮に100倍とすれば、ミカンの入っている1辺60cmの段ボール箱(細胞)の横に直径6mmの粒がくっついた、というイメージでいいと思います。(実際には1000倍かもしれないと言うことですから、その場合は0.6mmという砂粒みたいなものがくっついたということです)

 次に付着したウイルスは、細胞表面の膜の隙間(穴)を利用したり、膜の中に穴を開けたりして、ウイルスの持っている遺伝子を細胞内部に放出します。

 ここからが不思議なところですが、細胞内に放出された遺伝子は、細胞内の代謝作用を利用して勝手に細胞内で増殖します。増殖したウイルスは細胞膜の一部を突き破ったり、細胞そのものを破壊し放出されます。

 普通はこの段階でリンパ球のT細胞やNK細胞が活躍し感染した細胞を破壊して感染の拡大を防ぎます。

 分かりにくい話ですが、上記の過程をインフルエンザで考えると少しイメージが湧くかもしれません。

 インフルエンザウイルスを吸い込む。喉に吸着。喉の表面にある細胞内でウイルスが増殖。細胞内からウイルスが放出。感染細胞を破壊するためT細胞やNK細胞のリンパ球が活躍。それが炎症症状となって、喉が痛いと感じる。

 そこで止まればいいのですが、感染の勢いが強いと、呼吸によってウイルスが肺に入って肺炎とか、血液中やリンパ内を移動してリンパ節が腫れたり節々が痛くなったりと言う現象を起こし、体内での炎症が増えるので体温が上昇、という流れになるのかなと思います。

 問題は悪性リンパ腫ですが、ここまでの流れで私が一つ感じた疑問は、ある種のウイルスが造血幹細胞の表面に付着したとして、遺伝子が細胞内に入っても、その細胞の核の中に含まれている遺伝子は核膜で守られているので簡単には破壊されないような気がするということです。つまり浸入するだけではリンパ球の遺伝子は改変されないような気がします。

 ただたくさんあるウイルスの中には、感染することによってガンを引き起こすことが明らかになっているウイルスもあるみたいです。これらは腫瘍ウイルスと呼ばれているみたいですが、悪性リンパ腫に関係するような腫瘍ウイルスは見つかっていないようです。

 とするとと更に思考が飛躍してしまうのですが、もしウイルス説が正しいのであれば、、まだ未知のウイルスが存在する可能性も否定できない、というように思えます。

 もう一つ、T細胞やNK細胞が、感染した細胞を破壊するときに、ウイルスによって自らも傷つき、遺伝子が変質する可能性もあるなと思えました。

 そういったことを基礎知識として、では具体的に既存のEBウイルスの感染による影響とはどんなものか、次に考えてみたいと思います。


表紙に戻る 悪性リンパ腫の基礎知識 EBウイルス