治療の基礎知識

 これまでまとめてきたことを再度まとめると

@ 骨髄中に血球の元になる造血幹細胞がある

A 赤血球、血小板、白血球等の血球はこの造血幹細胞が骨髄中で分化成熟して作られる

B 白血球は好酸球、好中球、好塩基球、単球、リンパ球で構成されている

C さらにリンパ球と一口に言っても、その種類は、B細胞、T細胞、NK細胞等、いくつかの種類がある

D リンパ球は体内で免疫反応を起こし、感染を予防すまたは排除する重要な血球である

E リンパ球は骨髄や胸腺で成長するが、その後は血液やリンパ液を通して全身に広がる

F 広がる過程でリンパ節に集まることもある

G 悪性リンパ腫は、染色体に異常をきたしたリンパ球が、勝手に増殖する病気である

 以上の事から、病気を特定する際に知っておかなくてはいけないことは

@ B細胞、T細胞、NK細胞の、どの細胞が異常増殖をしているか(細胞の種類)

A B、T、NK細胞の成長過程のどの段階で異常が発生したか(成長の過程)

B 異常によって病変が認められるのは、どの組織か(病変の場所)

C 病変の進行状態はどの程度か(病期)

ということになります。従って、よく文章を書くときは5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうした)ということが大事だと言われますが、悪性リンパ腫についても、

@ いつ発生したのか

A リンパ球が作られるどの過程で発生したのか

B どこで発生したのか

C 病変はどこで観察できるか(発生場所と増殖場所は異なる可能性もあります)

D B、T、NKのどの細胞が異常なのか

E それぞれ細胞の中のどの部分が異常なのか

F なぜそのような異常が起きたのか

G その結果現状(悪性度)はどうなっているのか

ということをすべて知った上で治療を始めないといけないということです。これまでまとめてきた検査は、これらの情報を得るために行っていると言っても過言ではないと思います。

 こういった内容を、ある程度分かりやすく説明するために、悪性リンパ腫の治療に当たっては、その病名の説明と種類、病期の段階、悪性度、診断確定以後に予想される症状、等について詳しい説明が行われ、続いてその治療方針の説明となります。

 しかし私自身も経験しましたが、専門的な知識のある医師の説明は、かなり良心的に説明してくれても、どうしても専門用語が多くなり、分かりにくいという印象を持たざるを得ません。

 しかし患者や家族としては、先ず自分または肉親の病気がどのようなものであるかと言うことをきちんと理解しないと抗ガン剤等の治療を受けるときも、ただ副作用等で苦しむだけになってしまう可能性があります。

 つまり自分の病気を理解し、その病気を治療するために医師から提案される治療法を理解し納得する必要があると言うことです。(しかし書くのは簡単ですが、私自身当時を振り返って、なんだか訳の分からないうちに事態がどんどん進行したなという印象を持っています)


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