悪性リンパ腫で行われる放射線治療とは

 前ページまでが放射線治療の基礎知識となります。そういったことを頭に置きながら悪性リンパ腫の場合どのように効果があらわれるのか、ということをまとめておきたいと思います。

 先ず使用されるのは、通常よりも高いエネルギーのX線です。ひじょうに大きな振動数の電磁波を特定の場所に絞り込んで集中的に照射するということになりますが、そのイメージをとらえるものとしては、電子レンジがいいかもしれません。

 電子レンジは、あのレンジ内に高い振動数の電磁波を飛び回らせて、それが食べ物に含まれる水分子を揺さぶる性質を利用して、食べものを温めています。

 これは物理で言う共振という現象ですが、例えば旅客機やジェット戦闘機が低空飛行をするとき、その爆音で窓枠がビリビリ震えたりするのと同じ原理です。

 要するに爆音の振動数と、窓枠が振動しやすい振動数(固有振動数と言います)が一致すると、振動がより激しくなるという現象です。

 当然ながら爆音が近距離で聞こえた場合(エネルギーが大きい場合)、窓枠がはずれたりガラスが割れたりします。これと同じように、放射線治療は、高エネルギーのX線をガン細胞にぶつけることにより、細胞内の分子や原子(特にガン細胞のDNA)の結合状態そのものを揺さぶり、場合によってはその結合を切ってしまうことを目的とします。

 DNAを切ってしまえば、そのガン細胞はもはやそれ以上分裂できず、増殖が止まります。そうするとその細胞そのものもやがて壊れてしまい、破片になってしまいます。後は免疫細胞(食細胞?)がその破片をさらに細かく分断してしまいます。

 ではガン細胞周辺に存在した正常細胞への影響はどうなのか?もちろんこれも大きな影響を受けるわけですが、どうやら正常細胞のDNAはがん細胞のDNAより強固に出来ているようで、破壊される度合いが少ないようです。

 これは柱や壁をしっかりと建築した1軒家と、建物をどんどん増やすためだけにともかく骨組みだけどんどん作ってしまう長屋のような構造の建物が、台風や地震等で外から強い風や振動を受けたときの壊れやすさを考えればよいと思います。

 また例え一部が壊れたとしても、正常細胞の場合は設計図がしっかりしているため、その復旧力も大きいようで、すぐに元の細胞と同じものを作り直す事が出来ますが、ガン細胞の方はもともと設計図もろくにない状態で、ただ軒先を広げるだけの目的で作られていますから、元の状態に戻すことは難しいようです。

 唯一問題なのは、何回も書いていますが、リンパ球が全身に分布していると言うことで、ある場所にかたまっているように見えても、それ以外の場所にもリンパ腫細胞が存在していると、そのリンパ腫細胞が再び激しく増殖したりして、いくら放射線治療をやっても効果が上がらない、と言うことになりかねないということです。 


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