多剤併用(CHOP)の1回目の治療日数

 抗ガン剤は本来の抗ガン作用と副作用との兼ね合いや個人個人の体質による副作用の表れ方が異なるため、また一つ一つの副作用が非常に強く出る事が多いため、いくつかの薬剤を併用します。

 また各薬剤は、基本的には細胞分裂時に作用するということが分かっていても、薬の種類によってDNA合成を直接阻害したり、RNA合成を阻害したり、分裂時の紡錘糸形成を阻害したりと、微妙にその作用する相手が異なります。

 これによって、個々の薬剤が細胞分裂の様々な過程でその動きを阻害するわけで、その意味では一つだけの薬剤を投与するより効率がよくなります。

 例えば畑の中で雑草が増えてきたとき、その雑草のおしべの花粉がめしべにくっつかないようにするような薬だけでなく、おしべの花粉を作らせないようにするとか、くっついても遺伝子がめしべに移動しないようにするとか、要するに受粉という過程をさらに細かく見て、個々の過程に作用するような薬を混ぜて、全体として種を作らせないようにする、というような考えに似ているかなと思われます。

 悪性リンパ腫では、この多剤併用治療の代表的な方法(標準治療)をCHOP療法と呼んでいます。CHOPというのは使用される薬剤の名称から名付けられてものですが、以下のような薬剤です。

一般名 商品名 分類 機能
シクロホスファミド(C) エンドキサン ナイトロジェンマスタード系 DNA合成阻害、
ドキソルビン(H) アドリアマイシン アントラサイクリン系 DNA、RNAの合成を阻害
ビンクリスチン(O) オンコビン ビンカアルカロイド 紡錘糸(微小管)形成を阻害
プレドニゾロン(P) プレドニン 副腎皮質ホルモン 炎症反応の抑制


 ドキソルビンは英語で「ハイドロ・・・」という名称があるためHとなっています。

 具体的にはこれらの薬剤を、1週間ぐらいの間に毎日薬の種類を変えて少しずつ投与し、経過を観察し、その状況によって1〜2週間後に再び同じような方法で、薬を投与します。

 従って、最初の投与期間とその後の経過観察の期間を合わせると、1回の治療に要する期間は2〜3週間程度になることが多いようです。

 この間、患者さんの血球数は極端に減少し、またこれまで説明してきたように体細胞も影響を受けますので、人によっては強烈な副作用にさらされることになります。(我が家の連れの場合、治療を始めた頃の副作用はあまりでないように感じました。つまり体力があれば副作用も軽いということです))

 その後減少した血球数が正常値まで回復し、副作用も収まってきた頃、同じ投薬が行われます。治療は計画的に行われますが、患者さんの血球数の回復が充分でない場合は、計画が少しずつ後ろにずれていきます。(治療期間が長引くと言うことです)


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