生存曲線のグラフから分かること

 実際の化学療法の生存曲線のグラフを見ると、治療後に寛解し、さらに再発もしないという方が存在しますから、下降するグラフの曲がり方は徐々になだらかかつ直線に近くなり、もしすべての患者さんの最後の自然死まで観察することが出来れば、最終的に0%となります。

 つまり、最初の内は化学療法がうまくいかないという理由(リンパ腫細胞の増加、骨髄抑制による感染症、副作用による体力低下等)で通常よりも亡くなられる方が多くいるので、自然死よりも急激なカーブを描いてグラフは下降していくはずです。

 しかし、その後は寛解し再発もしないという方もいるので、亡くなる理由が悪性リンパ腫ではなく、通常の病気や事故、老衰という原因に徐々に変化していくと考えられます。

 ということは、生存曲線で化学療法の効果を確認すると言っても、無闇に長い期間を対象にする訳にもいかないように思えます。

 そう思って調べてみると、実際に化学療法の効果を表すためには5年後の生存率を使う事が多いようです。(1年や10年で考えることもあります)つまり5年後の時点で治療を受けた方の何%が生存しているかと言うことが大きな意味を持つわけです。

 ただし嫌な言い方ですが、これは生きていればいいのであって、その状態を問いません。つまり元気いっぱいで仕事をしている方から、残念ながら再発して再び化学療法を受けているとか、それすら受け付けない状態でなんとか生きている、という場合も含みます。

 また、ある化学療法を行ったときにどのような結果になったかという生存率のグラフを見たとき、二つの視点で考察することが出来ます。

 一つは約半数(50%)の人が何年ぐらい生き延びたかという横軸の数値と、もう一つが5年後の生存率は何%あるのか、ということです。

 ただし実際にいろいろなグラフを見てみると分かりますが、同じCHOP療法でも検索によって微妙にグラフの形が異なっています。

 これは統計の計算方法にも寄るようですが、もう一つ大事なことは、グラフを作る統計の元になっている患者さんの病態が、実は一人一人違うからではないかと私は推測しています。

 実際問題同じCHOP療法をやるにしても、その療法を施される患者さんには、男女の違いや年齢差、性格(病気に対する受け止め方や姿勢)、病気のステージ(悪性度)、病気が発生した部位、進行状況等、一人一人がまったく異なる症状を示している筈です。

 それらを大まかに似たようなグループでひとまとめにしてグラフを作っているわけですから、そのグラフの元になっている病態が自分自身の病態と一致する部分が多くないと、これらのグラフをそのまま自分の生存率にあてはめることは出来ないと言えるような気がします。つまりグラフはあくまで参考程度であるということです。


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