化学療法の選択は難しい

 生存曲線でよく例に出されて比較されているのはCHOP療法とこれにリツキサンを加えたR−CHOP療法のグラフです。

 これを見るとR−CHOPの方が、常に生存率は高くなっていますから、基本的にはこちらの治療法が有利だと言うことになります。

 同様に悪性リンパ腫の化学療法は、抗ガン剤そのものの種類がたくさんありますから、それを組み合わせる多剤併用法もほぼ無限にあります。それらの中で最も有効な組み合わせは何かということを、医療側は常に研究しています。

 そのいくつかは実際に医療現場で実施され、中にはダジャレのような名前がついているものもあります。(CHOPそのものも空手チョップからのシャレです)

 こういった名前は医療側にとっては親しみやすいのかもしれませんが、生死の境を意識しているような患者さんや家族にとっては、なんだか馬鹿にされているような印象を持つことも事実です。事実私はそう感じました。

 それはそれとして、こういった様々な化学療法の効果をCHOPと比較した生存曲線もネットではいろいろ検索することが出来ますが、残念ながら現在の所、CHOPとR−CHOPで比較されるような、歴然とした効果の差は認められていません。

 中には抗ガン剤を7種類以上使うものもあり、これなら完璧にリンパ腫細胞を壊滅させることが出来るだろうなと思えるものもありますが、そういった強力な化学療法でも、CHOP療法の結果より良くなったという結果は得られていません。

 その理由ですが、強力な化学療法を行えば行うほど、見かけのリンパ腫細胞はたしかにどんどん消えると思いますが、同時に正常細胞も影響を受けるため、副作用が激しくなったり、骨髄抑制で白血球が回復しなくなったり、赤血球、血小板の不足でしょっちゅう輸血をしなくてはいけなくなったりして、徐々に患者さんの体力そのものが奪われるからだと解釈しています。

 また抗ガン剤というのは、毒性がひじょうに強いため、新たに別のガンを発生させる発ガン性も持っていて、強い化学療法をやればやるほど、違ったガンが発生する危険性も高まります。

 つまり人間に対する化学療法では、現在の所、CHOPが最も強い化学療法であり、それを上回る化学療法は体力的に無理があるという結論になります。

 我が家の連れは、入院当初病気の勢いが強いうえに、体力そのものが落ちていたため、最初の化学療法はCHOP半量で実施しました。

 その結果ですが、初めての抗ガン剤投与だったためか、「リンパ腫細胞はみるみる減りました」、という結論を医師から聞いて喜んでいたのですが、その後予想より早く病気の勢いがぶり返してきたため、CHOP療法では先行きが厳しいかもしれないと言われ、結局聞いたことのない様な強い化学療法である「CycloBEAP」という療法を実施しました。

 確かに強い化学療法で、その効果もはっきりと現れ、強い副作用も若さと体力でなんとか乗り切り、最後は寛解まで行きましたが、半年で再発。今このページを書きながら、最初の強い化学療法実施により、ほぼ再発は間違いなかったのではないかという気がしています。

 であるならば最初から効き目は弱かったかもしれませんが標準治療のCHOPを選択すべきだったかと思えるわけですが、そうなると最初の治療で病気の勢いを抑えることが出来ず、寛解までいたらなかったかもしれないなとも思え、今更どう考えてもしょうがないのですが、あのときどうゆう選択肢が一番良かったのかと悩みは尽きません。

 ただ少なくともこういった化学療法に対する知識がもう少しあれば、無理に強力な化学療法は選択しなかったかもしれません。そういった反省もあって、化学療法を行うときは、病気に対する知識が不可欠だと感じ、役に立っているのかどうかは分かりませんが、分かる範囲で病気についてまとめ直しているわけです。


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