化学療法の選択について

 インフルエンザは外部から体内に取りこまれたインフルエンザウイルスが原因であると分かっています。しかもインフルエンザの種類によっては、かなり激しい症状を起こし、時には命に関わることもあります。

 しかし通常は体内の免疫指令が直ぐに発動され、抗体をどんどん作り、それがウイルスを駆逐していきます。ただ駆逐する過程で激しい闘いが起きますので、そこが炎症を起こし発熱します。喉が赤くなって腫れるというのはまさに闘いが起きていることを表しているわけです。

 通常この闘いは、体内の免疫細胞の生産の方がインフルエンザウイルスの増殖スピードよりも早いため、一時は辛い症状も出ますが、基本的には自力で治すことが出来ます。つまり予防接種をしなくても治る、と言うことです。

 しかし出来れば不快な症状は経験したくないし、インフルエンザに感染したとしても、できるだけ軽く済ませたいと誰もが考えます。また高齢者の場合は免疫力そのものが衰えている可能性がありますから、予防接種が必要だという議論になるわけです。

 また運悪く?感染し、実際に症状が現れた場合でも、解熱剤を初めとする様々な不快な症状を取り去る薬剤が処方され、最近はタミフルやリレンザという薬も開発され、症状軽減に役立っています。

 これらの治療方法はインフルエンザウイルスというものの正体や、感染したとき体に対してどのような作用を及ぼすかがわかっていると言うことが大前提になっています。(それでも一時タミフルは子供達に悪影響を与えることがあると言われ問題になりましたが)

 一方悪性リンパ腫ですが、原因は不明です。遺伝子のミスコピーであるとか、放射線や化学物質、体内の炎症や特殊なウイルス等、いろいろな原因が囁かれていますが、インフルエンザ等の病気に較べると、ひじょうに曖昧です。

 では、原因も分からないのにどうやって立ち向かうのか、と言うのが治療の根本的な問題点であるような気がしますが、実際には抗ガン剤の様々な組み合わせを試してみて、「これが一番効果がありそうだ」と臨床例を積み重ねていくわけです。

 その結果もっとも効果がありながら、副作用への対処も容易であると分かったのがCHOP療法なわけで、これが標準治療と言われる理由です。

 しかしこういった化学療法の選択は、要するに「様々な療法を試しながら考える」という、同時進行の形で治療法が決まっていると言うことになりそうです。

 つまり悪性リンパ腫のさまざまな症例に対して、これまでやって来た治療法を総合すると、たまたまCHOP療法が一番副作用が少ない割に効果が実証されている、ということが経験的に分かっただけで、なぜそうなのかということを説明している文章はほとんどないということです。(専門家ではないので知らないだけかもしれません)

 それで充分じゃないか、と言われればそれまでですが、現実には我が家の連れの場合も含めて、より強い化学療法を提案されることも有り、その場合は「医師が勧めるんだから、きっと効くんだろう」と患者は思うわけです。

 しかし(実際私は知識がなかったのでそう思いました)、医師側にとっては、「この治療法でやったらもっと良い効果が出るんではないか」という、ある意味実験的な意味合いも含まれてしまうのかなと言う危惧というか疑いを感じています。

 もちろんそれでも治ればいいじゃないか、という考えもあると思いますが、やってみないと分からない、と言う部分があるため、特に強い副作用等で悩まされるような場合や、最終的に治らなかった場合は後悔が大きいように思います。


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