私の感覚では悪性リンパ腫のリンパ細胞の細胞周期は、連れの症例から判断すると、最初のリンパ腫細胞が1個から始まることを仮定すれば、だいたい7日ぐらいになるのではないかと結論づけました。
そこで仮に細胞周期を7日と仮定すれば、7日間の間このリンパ腫細胞を駆逐できるような効力を持つ抗ガン剤があれば、その抗ガン剤は大きな効力を発揮するように思えます。
そこで改めて標準治療であるCHOP療法の薬剤を眺めて、さらにその薬剤が細胞周期内のどの時期にもっとも効果を表すかということをまとめてみると、(ウィキペディアを参考にしています)
一般名 | 商品名 | 分類 | はたらき |
シクロホスファミド(C) | エンドキサン | ナイトロジェンマスタード系 | DNA合成阻害、 |
ドキソルビン(H) | アドリアマイシン | アントラサイクリン系 | DNA、RNAの合成を阻害 |
ビンクリスチン(O) | オンコビン | ビンカアルカロイド | 紡錘糸(微小管)形成を阻害 |
プレドニゾロン(P) | プレドニン | 副腎皮質ホルモン | 炎症反応の抑制 |
一般名 | 分類 | 効果を表す時期 | |
シクロホスファミド(C) | アルキル化薬 | S期 | DNA合成期 |
ドキソルビン(H) | 抗ガン性抗生物質 | S期 | DNA合成期 |
ビンクリスチン(O) | 植物アルカロイド | M期 | 分裂期 |
プレドニゾロン(P) | ホルモン剤 | G1期 | DNA合成準備期 |
となり、ちなみに細胞周期は
G1(DNA合成準備)→S(DNA合成)→G2(細胞分裂準備期)→M(分裂期)→G1
という流れになっています。従って、この4種類の薬剤を組み合わせると、細胞分裂のG2期を除いた、ほぼすべての時期に対して何らかの抑制効果が得られるということになり、これが多剤併用を行う根拠の一つになっていることが改めて分かりました。(これまでは副作用を散らすためだとばっかり思っていました)
また一般に抗ガン剤は分裂期に働く、という先入観も間違っていたように思います。この表を見る限りでは、分裂のあらゆる時期に働いているように思えます。
こういった知識を頭に入れて、あらためて細胞周期との関係を考えるわけですが、もしリンパ腫細胞の細胞周期が7日程度なら、投与した抗ガン剤の効力が7日間程度あれば、すべてのリンパ腫細胞に何らかの抗ガン剤が関与出来ることになります。
つまり第一日目の4種類の抗ガン剤すべてを投与し、その後プレドニゾロンを5日間連続で投与する、という意味は、プレドニゾロンを除いて、他の抗ガン剤の作用期間が5日から7日程度あるのかなと言うことを意味しているのではと思えます。