前ページでマッサージの効果について書いたのですが、若干疑問が生じました。それは、確かにマッサージは血行を回復し、精神的な癒し効果があると思えるのですが、反面増殖しているガン細胞をもみほぐしたりしたら、その刺激によってガン細胞が分離し、それが他の場所に流れて転移するのではないかという不安です。
この点についてネットでいろいろと調べてみました。すると、そもそも良性腫瘍と悪性腫瘍の違いは、増殖しつつある腫瘍細胞が「転移」するかどうかという点ににあることが分かってきました。
つまりある場所にかたまって、そこだけで増殖しているような細胞なら、その部分を切り取ってしまえば、他の臓器には特に問題が起きないわけで、これが良性腫瘍だというわけです。
これに対して、ある場所で発生したガン細胞が、血管中の血流やリンパ管中のリンパ液の流れに乗って、最初とはまったく違う場所に定着し、そこで増殖を始めるようなものを悪性腫瘍と呼んでいます。
ここで、今、後者のような悪性のガン細胞が体内のどこかに存在し、その部分の血行を良くするためにマッサージやストレッチを行ったらどうなるのか、ということが気になります。
マッサージやストレッチというのは、組織にな対して外部から物理的な力を加え、簡単に言えば筋肉や腱、血管等を変形させ、血流を回復させる行為だと思います。
このとき、変形した部分にガン細胞があると、その一部が剥がれやすくなると思われます。つまりマッサージやストレッチによって転移を促進させてしまうのではないかということです。
そこで今度は転移のメカニズムについて調べてみました。するとガン細胞が増殖をしているときは、互いの細胞同士を結合させるような物質が細胞の間に存在し、転移を起こそうとするときはその物質の構造が変化し、結合状態が解除されると言うことが分かりました。
ということは、今まさに転移をしようとしているガン細胞に対してマッサージやストレッチを行うと、その転移活動はさらに促進される危険性があることになります。
しかしそうなると日常生活の中の普通の筋肉の動きであっても、転移する可能性が高まると言うことになるわけですから、転移を抑えるために患者はベッドの上でまったく動けないという状態になってしまいます。(それでも呼吸や心臓の動きは抑えられませんが)
つまり極端に力を加えない限り、そう簡単にガン細胞の剥離は起きないと考えた方が辻褄が合うように思います。
一方、ガン細胞の転移は、増殖した細胞の一部が時々ポロリとこぼれて、それが他の組織に運ばれて増殖する、というイメージとは異なると思われます。
むしろ、ある程度の大きさになった転移性の腫瘍は、次から次にポロポロとガン細胞をこぼしていくイメージが正しいように思えます。
何故そう思うかというと、前にも書きましたが人間の体はおよそ60兆個の細胞で出来ているわけですから、腫瘍として認識されるような1gのかたまりには10億個の細胞が詰まっているわけで、それがしょっちゅう細胞分裂をしているはずですから、そこからポロポロこぼれ落ちる転移性の細胞もものすごい数になるだろうと思われるからです。
しかしながら実際にはそういった細胞が元になって他の場所でガン細胞として生育できるのは確率的にひじょうに小さいとしか思えません。(そうでないと全身のあらゆ場所に同時期にガンが多量に出来てしまう事になります)
ではどうして大量にこぼれ出た転移性のガン細胞が他の場所で増殖することが出来ないのかと考えると、要するにもともとが異常な細胞ですから、固まりになった親のガン細胞組織を離れた瞬間に栄養を断たれてアポトーシスが起きるとか、免疫系の働きによって駆逐されたり、移動する手段がなく元の細胞の近くで死に絶えたりと言うことが多いのではないかなと推定できます。(当然個人的な推定です)
当然ながらこの時周囲に充分な血流があれば、剥離したガン細胞はその血流に乗ることも出来るはずですが、そのためには血管壁をガン細胞が通過しなければいけないというような条件もあります。
さらに通過できたとしても血流が回復し、血管の中の免疫系の細胞がきちんと働いてくれることによって、異常な細胞は駆逐されやすくなるのではないかとも思えます
と言うわけで、私なりの個人的結論ですが、マッサージやストレッチによって患部周辺の血流を回復させることは、これまでの流れから言って意義があると思えますが、患部に直接必要以上の強い力を加えてマッサージやストレッチを行うことは避けた方がいいのかもしれないなと感じています。
しかし患部をもみほぐし血流を回復させれば、各種の免疫系がガン細胞に働きかけやすくなることも事実ですから、癒し効果も含めて軽いマッサージ(さすって上げる程度)やストレッチ(ゆっくり時間をかけて曲げ伸ばし)ならやった方が良いのではないかと思えます。