免役とは何か

 「生命とは何か」というのは、簡単なようでそれを定義するのはひじょうに難しいです。私の仕事である理科(生物)の授業では、生命の定義はおいておいて、生命の特徴を先ず考えます。(ただし私の専門は生物ではなく物理です)

 高校生に「生命の特徴は何?」または「生きているとはどうゆうこと?」という質問をすると、だいたい真面目な生徒なら以下のような答が返ってきます。

@ 動く、活動する
A 食物の摂取、排泄すなわち代謝活動
B 子孫を残す

という三つが代表的な答でしょうか。そしてこの条件を満たすために、植物は光合成によって土壌中の無機物と空気中の二酸化炭素から体細胞を作り、成長し、繁殖していきます。

 一方動物(人間)は、自分自身では無機物から体細胞を作り出すことが出来ないため、植物が作ってくれた様々な有機物や他の動物が持っている有機物を、口から摂取し、唾液や胃液でそれらを細かく分解し、腸でその分解したものを吸収、そしてあちらこちらの細胞や肝臓で有用な物質に整形し直し体細胞を作る、という複雑なことをやっています。

 またそれらの化学反応を体内ですすめるために、酸素を呼吸し、その酸素の酸化反応(ゆっくりした燃焼反応)によって得られるエネルギーを利用しています。

 これが人間の基本的な生命維持のメカニズムだと思いますが、当然ながら外部と直接接している皮膚または口、更にはその奧の肺、胃や腸といった器官も、ある意味外部と接しています。

 つまり口から肛門まで長いチューブがあって、その周りにいろいろな組織がくっついているというイメージです。

 一方、我々はよい空気を呼吸し、体に安全とされる食べ物を選択しているつもりですが、大気中には微量の有害化学物質や細菌、ウイルスが含まれ、食物の中にも細菌等が含まれ、更にはもともと食料として適さないものをうっかり食べてしまう場合もあります。

 また我々の体は皮膚というバリヤで外部環境と内部環境を分けていますが、その皮膚が傷ついたりすれば、そこに空気中の有害物質が入り込んだりする可能性もあります。

 それでも我々が80年程度生きていられるのは、無意識の内に体を防衛するシステムが働いているわけです。そしてこの防衛システムの働きが弱くなり、内部で本来の生命活動と異なる様々な化学反応が進行すると、我々はそれを内科的な「病気」として認識します。

 これらの防衛反応を、一般に「免疫」という言葉で呼んでいるわけですが、この防衛システムが的確に働いていれば、ガン細胞もそう簡単に増殖はできないだろう、と言うのが、これから調べようと思っている免疫療法の基本的な考え方なのかなと思っています。

 実際、一般人であっても、日々何千個もガン細胞が生まれている可能性があるのに、それがガンのかたまりにまで成長しないのは、まさにこの免疫システムの効果だと考える人が多いわけで、本当にそうなのか、という基本的なことまで含めて少しずつ調べていきたいと思います。


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