ガン細胞を見分けて駆逐するには

 自己と非自己を区別する目印となるのは、細胞膜表面にあらわれるタンパク質であることが分かりました。このタンパク質は、その細胞の中の核に含まれている遺伝情報によって作られています。

 この遺伝情報はもともと1個の受精卵が分裂して約60兆個の細胞になったわけですから、すべての細胞は同じ遺伝子を持っています。従ってすべての細胞膜表面にあらわれるタンパク質も同一人物なら同じ物だという結論になります。

 これは地球上すべての人間の顔つきが、構成要素(目は二つ、鼻は一つ、口は一つというような)は同じなのに、結果として出来上がる顔つきは、双子等を覗いて、同じような顔はほとんどないというのと似ていると思います。

 (双子を含めて似たような顔はあります。だから移植が出来るのだと解釈できます)

 その結果、我々は普通その顔を目で見て、Aさんで友達だとか、Bさんだからちょっと嫌だなとか判断するわけです。

 免疫機能もこれと同じで、細胞の顔つきを見て、「あっこれは自分自身のものだ」とか「ありゃりゃ、いつのまにこんな異質の細胞が存在するようになったんだ」ということを免疫を担当する細胞が自動的に判断しているということです。

 で、何回も書きますが、問題はガン細胞ですね。もともと自分の細胞の遺伝情報が何らかの原因で変化し生まれたものです。しかし自分の細胞が元になっていることは間違いありません。その細胞を、こいつは「ガン細胞だ」とか、「異質の細胞だ」と言うように判断できるのか?ということです。

 問題が複雑になるので大まかに考えますが、要するにガン細胞は染色体の異常で生まれるわけですから、その染色体の異常が、これまで説明している細胞膜表面のタンパク質の構成を変化させるかどうか、と言うことになるわけです。

 ガン細胞を作った遺伝子の変異が、細胞膜表面のタンパク質も変化させてしまうと、これは異質な細胞である、と免疫系は判断しやすくなります。

 実際我々の体の中に日々生まれていると思われるガン細胞は、このような異質なタンパク質を表面に持ってしまい、そのため免疫系の作用で日夜駆逐されている、と言うのが一般的な考えだと思います。

 しかしガン細胞の遺伝子変異が、単に増殖に関する部分だけの遺伝子変異であって、細胞膜表面のタンパク質の構造が変化しなかったら、免疫系はこれを自分自身の細胞であると判断し、見逃してしまうはずです。

 もう一点。細胞膜表面にあらわれたタンパク質が異質な物であっても、それを覆い隠すようなメカニズムまたは免疫系が働かないようにするメカニズムをガン細胞が持っている場合もある、という指摘もあります。

 と言うことは、ガン細胞が増殖する条件として、ガン細胞の立場として一番良いのは、

1.表面のタンパク質が元々の個人が持っているタンパク質と同じ物であれば良い。

2.細胞膜表面に異質なタンパク質があらわれても、それを覆い隠すメカニズムを持っている。

3.免疫系の働きそのものを弱めるメカニズムを持っている

ということになります。

 従って、日常的に生まれたガン細胞がすぐに駆逐されているのは、こういったカモフラージュが出来ないまま、異質なタンパク質を露出させた状態で生まれたガン細胞である、と言う結論になりそうです。

 なおこのページをまとめるにあたって感じたことですが、であるならば免疫系が働きやすい場を提供するためにも、免疫の代表選手であるリンパ球を運搬する血流の役目は大事だなと改めて思いました。

 つまり少なくとも免疫系が働くために、リンパ球がガン細胞の近くまで近づくことが必須条件となるはずで、そのためにも血行の改善が必須だと感じました。


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