βグルカンとリンパ球

 アガリクスの説明から「βグルカン」という成分を調べることが大事だと言うことが分かり、前ページでこの物質の概略を説明しました。しかし依然として、どのような作用でこのβグルカンが免疫力を高めるのかはよく分かりません。

 ただのグルコースのヒモが何故リンパ球を刺激するのかが不明だと言うことですが、この点について調べていたら、そもそもこのβグルカンそのものにも、その立体的な構造により、様々な種類があることが分かってきました。

 また一般的にβグルカンと言った場合、それは「アガリクス」ではなく、元々はパン酵母に由来する物質であることも分かってきました。

 そこで「アガリクス」という言葉にとらわれず、一般的な意味でβグルカンが体内に入ると、リンパ球がどのような影響受けるのかと考え「βグルカンとリンパ球」という検索語句でネットの情報を検索してみました。

 するとヤフーの検索の第1位に「ガンの辞典」というページがヒットし、その中で「パン酵母ベータグルカン」というページが分かりやすいように思えたので、その内容の重要な部分を要約してみました。

@ マウス実験でパン酵母から抽出したβグルカンをマウスに与えると、腸管でリンパ球が増えることが確認された(その差は通常時のおよそ5倍だそうです)

 ただし実験結果が事実であるとしても、これまでの知識で考えると、単純にリンパ球が増えるだけでは、がん細胞の増殖を抑制するのは難しいと私は思っています。

 その理由は、
ア) リンパ球はB、T、NK等のそれぞれのリンパ球がバランス良く増えていかないと、免疫力は増加しない
イ) 既存のリンパ球がいくら増えても、血行が悪ければがん細胞まで到達しない
ウ) 既存のリンパ球は、すでに一度がん細胞を見過ごしている可能性がある(だから増殖できた)
エ) ということは同じ資質を持ったリンパ球をいくら増やしても、がん細胞を認識することが出来ない
オ) リンパ球の数を増やせば免疫力が増加するという考えに立つならば、G-CSF(ノイトロジン等)を投与し、免疫細胞の数を増やすことで充分免疫力強化になるはずだが、そのような治療は行われていない。

 ただし、化学療法やガンとの闘病により、リンパ球そのものの数が著しく通常より減少している場合は、このβグルカンを摂取することによって、その回復が早まる可能性はあるなとも思えます。

もう1点
A βグルカンはその立体構造の特異性により、免疫細胞の受容体と結合しやすい

 この結合しやすいということだけで免疫力がアップするとは思えないのですが、要するに結合することによって、リンパ球が何らかの異物体を感知したことになるわけで、その異物体に対応するため感知したリンパ球を増やさなければいけない、という指令を出す可能性があります。

 つまりこの場合のβグルカンとは、アレルギー反応の抗原のようなものではないかなと想像しています。

 結果的に、その結合という刺激によって増えるわけですから、その先は@の内容になります。

 というわけで、βグルカンが免疫力を活性化すると言っても、それは要するに免疫細胞の数が低下した状態の生体に対して、その快復力を早める可能性があるということで、すでにある程度免疫力を維持している人が摂取しても、あまり意味がないように思えます。

 ただガン患者さんはこういった免疫系が衰えているからこそガンが発生したんだと考えるなら、これらの物質を経口摂取することは意味があるのかもしれません。

 また現在の日本のように高齢者が増える環境では、年齢と共に必然的に免疫力は低下するようですから、こういった物質を常日頃から摂取することは意味があるかもしれません。

 しかしながら免疫細胞の増殖力にも限界があるようにも思え、必要もないのにこういった健康食品を日頃から摂取すると、本当に必要なとき思ったように免疫細胞が増殖しない、という事態も考えられるように思えます。

 私の連れが大量化学寮法をやって白血球が減少したとき、最初の頃の治療ではほんの数日で自力で回復しましたが、最後の方の治療では、いくらG-CSFを投与しても思うように白血球が増加しませんでした。

 そういった実例を見ていると、もちろん連れの場合は骨髄が疲弊してしまったということもあるのだと思いますが、βグルカン等の摂取によって、常に免疫細胞を刺激していると、いざとなったとき思うように増殖しないのではないかという不安を若干感じます


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