効果があることの証明

 免疫力増強抗ガン効果があると言われている健康食品について調べてきましたが、14種類ほど調べたところで、前ページに書いたような疑問を持つようになりました。

 すなわち、ある健康食品が免疫力やガンに対して効果があると言うことをどのように証明するのかということです。

 そう考えると、そもそも通常の薬であっても、「この薬は効いたという実感」=「薬の効果」であると断言することは、ひじょうに難しいような気がしてきました。

 「そりゃ考え過ぎだろう」とか、「そこまで疑わないで、素直に医者の言うことや、世間の評判を信じて服用すればいいじゃないか」と気楽に考えてそれで納得できればいいわけですが(実際通常服用している薬はそんな気持ちで服用していると思います)、相手がガンとなると、そうそう気楽に構えるわけにもいかないと思います。

 そこで先ず簡単な例として風邪薬を考えますが、喉が痛い、咳が出る、熱が出たという症状を感じて、いわゆる市販の「総合感冒薬」や、医師からの薬を服用します。すると対処療法とはいえ、症状が軽くなったように思え、そのことから我々は「薬が効いた」ということを実感します。

 しかし薬を飲まなくても、もしかしたら自前の免疫力や、いつもより長く睡眠時間を摂ることによって、風邪の症状が治まってきた可能性もあります。

 つまり自分の風邪の症状が軽くなったのは、薬のせいなのか、持ち前の免疫力のせいなのか、風邪だと分かって仕事を休んで睡眠時間を多く摂ったからなのか、どれが一番効果的だったのか判断できないと言うことです。

 ただ気持ちの上では「薬を飲んだのだから症状は軽くなるはずだ」という思いこみというか期待はあると思いますので、余計に「薬が効いた」という意識は強くなると思います。

 しかし同一の風邪症状で、一人の人間が薬を飲んだ場合と飲まなかった場合の症状の変化を比較することは不可能ですから、厳密に効いたかどうかを判定するのはひじょうに難しいです。

 あえて言えば、10回も20回も同じような風邪をひいて、ある時は薬を飲まず、ある時は薬を飲んで、その後の経過を比較するしかないわけです。

 というわけで、薬を製造している会社はその点を考慮して、一人の人間ではなく、多数の動物や人間の臨床例を参考にしながら、実態に合わせて効き目のありそうな薬を開発していると言うことになります。つまり薬の効果を統計的に証明するということです。

 ところが健康食品の場合は薬と違って、原料そのものが曖昧だったり、製造方法がメーカーによって異なっていたり、出来上がった製品の品質がメーカーによってばらつきがあったり、有効な成分と思われる物質の含有量が異なっていたり、用法用量が違っていたりと、薬と違って不確定な要素がひじょうに多くなります。

 つまり統計的に効いた、効かないということを証明することがひじょうに難しいということになります。

 そうなると、統計的な話無しに、効いた効かないということに信憑性を持たせるためには、含まれていると思われる有用成分の効能を書き連ね、さらに体験者の感想を加える事によって、効果に信憑性を持たせると言うことになりそうです。

 ところが極端なことを言うと、ネットの情報で体験者の感想がはたして本当に体験した人なのかどうかは分かりません。またメーカーのホームページに書かれた体験は、「効果があった」と信じている人の体験だとしても、「効果がなかった」という体験はあえて掲載しないと思います。

 さらに本当に体験して効果があったと主張する人であっても、それがその健康食品の作用によるものかどうかは証明できないはずです。

 本来ならほぼ同じ条件、同じ症状の人を1万人ぐらい集めて、半数に健康食品、半数に健康食品と似ているほとんど効果がない食品を食べさせ、効果があるかどうかを判定すればいいわけですが、そういったことを実際に行いその結果を公表している健康食品メーカーのページはないように思います。(高血圧改善等で、数十人規模ならあるみたいですが)

 一方、ある特定のメーカーの健康食品が1万個(1万人分)ぐらい売れれば、もしガンというような重篤な症状でなければ、統計的に考えてもある程度の人数の人は、化学療法の効果や、自分の体力や免疫力によって症状が軽くなったとしても、「服用したことにより症状が軽くなった」と考える人がいると思います。

 さらにその中のまた一部の人が、善意から「この薬はよく効きました。本当に助かりました」という体験談を寄せ、それが体験者の声としてネット上に掲載されることによって、薬の信憑性は増す可能性もあります。

 健康食品に対して否定的な考え方を書き続けていますが、自分自身がもし今後何らかの重病になったとしたら、健康食品についてどうゆう立場で望むだろうかと考えながら書いています。

 当然ながらガンを含めて現代医療でも治癒が難しいと言われる病気になれば、私自身も少しでも治療に役立つような健康食品や民間療法を試すだろうなと思いますが、その際の前提条件は、上にまとめたように、効果があるかどうかを体験談や伝聞で判断するのはひじょうに心許ないということです。

 従って、広告で良いと書かれているからとか、誰某が推薦しているからというような理由ではなく、自分の症状の現状を分析して、何が足りないのかを考え、その足りない部分を補ってくれるような効能を持つ健康食品があれば、それを利用することによって、心理的にも助かるのではないかと思えます。

 ただしそれを補ってくれるのは、必ずしも健康食品とは限りません。ストレス解消や充分な睡眠、野菜を多くした食生活、適度な運動といった、健康を作る最も基本的な要素を充実させることによって、健康食品以上の効果をもたらすことも充分考えられます。

 また市販の医薬品がその効果を充分に表すことも考えられます。


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