細胞分裂の回数と造血幹細胞の特徴

 細胞が50回程度分裂をすると「アポトーシス」すなわち自然死に至るというのは、どのようなメカニズムなのか。これについては、今回このページをまとめるに当たって参考にした「かんじちょの生物学講座」というページ詳しくでています。

 それによると、各細胞に含まれている染色体の先端付近に「テロメア」と呼ばれる特殊な構造をした部分があるのですが、この部分だけは細胞分裂を行っても複製されず、分裂のたびに染色体全体の長さが短くなるそうです。

 で、このテロメアがある長さより短くなった段階で、細胞分裂はストップしてしまい、自然死に至ると言うことのようです。

 つまりコピー機で1回コピーする度に、本文以外の部分が少しずつ失われていき、ある限度を超えると本文すら読めなくなり、コピーそのものが意味をなさなくなる、ということです。

 ところで、細胞が50回ぐらいしか分裂できないと考えると、人間はあっと言う間に寿命が来てしまうような気がします。しかし実際には80年ぐらい生きているわけで、この理由は個々の細胞が常に細胞分裂状態にあるわけではないということを意味しています。

 つまり細胞分裂というのは、それを始めるための準備期間、実際の細胞分裂、そして分裂後の期間というふうに細胞の周期があり、この分裂後の期間(休止期といいます)が意外に長いことと、さらに細胞の種類(細胞が作っている組織)によって、細胞周期そのものの期間がかなり異なるようです。

 ネットで調べてみると、神経細胞、筋肉細胞、骨細胞はほとんど分裂しないと書かれています。一方、ひたすら分裂を続けられるのは、生殖細胞、ガン細胞の他に血球を作る「造血幹細胞」(やっと悪性リンパ腫に関連する語句が出てきました)だそうです。

 つまり造血幹細胞に異常が生じると、ひたすらその異常な血球細胞を生産し続けると言うことですね。悪性リンパ腫の治療が難しいのは、このあたりに原因があるからだと思います。

 というわけで、ここまでのまとめです。

 人間の体内では細胞分裂が行われている。この分裂では、自分と同じものを作り出すのが目的ですが、分裂の過程でミスコピーが起きる可能性がある。1個の細胞が何回分裂できるのかというと通常50回程度である。

 しかしこの回数は細胞の種類によって異なる。血球を作る造血幹細胞は、50回という制限(アポトーシス)はない。従ってミスコピーが起きると、それはひたすら増え続ける。

 だいたいこんなところでしょうか。ここまで来て、次の疑問は、まさに悪性リンパ腫の根源的な原因となるものだと思いますが、ではなぜミスコピーが起きるのか、そのきっかけは何なのか、ということです。


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