酸素吸入について

 酸素吸入と言うのをウィキペディアで調べてみると、「空気よりも高濃度の酸素を人為的に吸入すること」と書かれています。

 目的は酸素をある程度強制的に取り込むことによって血管内に含まれる酸素の量を増やし、組織に充分な酸素を供給することにあります。

 我が家のYは大学病院入院当初、咳の症状がひどく、肺からの酸素の取り込み量が低下したためか、最初はマスクを使った吸入が行われていました。

 ところが、強制的に吸入させるため、勢いチューブから出てくる酸素を含んだ気体が激しく喉にぶつかり、そもそも咳で痛めつけられていた粘膜をさらに刺激して咳が多くなると言う症状がでました。

 またもしかしたら、私が調べた範囲では不明ですが、放出される空気には水分があまり含まれていないため、喉の粘膜表面が乾いてしまい咳を誘発するのではないかと思えました。

 あまりに咳がひどいので、結局その後主治医に申し出て、マスク形式ではなく鼻から吸い込む形式にしたところ、多少咳が収まってきました。

 一方、鼻に変えたら、鼻の中の粘膜が乾いてしまいカサカサになったと本人が言っていましたので、上記のような印象を持ちました。

 なお入院当初の、軽い肺炎症状に対する酸素吸入に関しては、上記のような方法で何とか乗り切り、その後抗がん剤治療が始まりましたが、亡くなる3日ぐらい前から、やはり同じような肺炎症状となり、このときは細菌が肺内で増殖していましたので、酸素をほとんど取り込めないという状態に近づいていました。

 このとき初めて知ったのですが、酸素吸入と言うのは、吸入する空気の中の酸素量を調節できるようで、この最後の3日ぐらいは、酸素量を最大限にしても、体内の酸素消費量に追いつかないと言うことで、目に見えて体力を消費していきました。

 この頃主治医に先行きのことを聞いて、ついでに「今の酸素吸入の状態で苦しくないのか」とと尋ねたところ、主治医の回答は

 「酸素不足になると、脳内への酸素供給が少なくなるので朦朧としてきます・そのため見た目ほど苦しく感じないようです」という答えでした。

 ある意味緩慢な二酸化炭素中毒の症状に等しいのかなと思えますが、最後の最後に苦しみながら逝く、と言うことではなさそうだったので、ほんの少しですが救われた思いがありました。

 ただし主治医がそういったからと言って、本当に苦しんでいないのかと言われれば疑いは残ります。残される家族としては、せめてそう思って看取りたいという気持ちもあると思います。


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