我が家のYが、Cyclo−BEAP療法という、あまり前例のない、CHOPより強力な化学療法を終え、なんとか寛解に至ったときに、寛解後について主治医といろいろ話をしました。
当然ながら生活上の注意や、副作用の影響がどの程度続くか、自宅からの通院する日程等の打ち合わせですが、気になるのはやはり「再発」の可能性。
そこで思い切って「再発の可能性は」という問いを発してみたところ、主治医の見解は以下のようなものでした。
「いつ再発するかはまったく分かりません。しかし万が一再発したときのことを考えて、少しでも体力を回復させておくことが目標になると思います」
このときは、実は寛解に至ったという喜びのほうが大きく、主治医の言葉もメモしてあったのですが、その言葉に含まれる重要性に気が付いていませんでした。
今改めて上記の主治医の言葉を読むと、残念ながら再発は避けられない、と考えていたニュアンスを感じます。
すでに寛解については、その定義のようなことをまとめていますが、要するに悪性リンパ腫細胞が集まっていると思われる部分の血液なり組織をとり、それを顕微鏡等で分析し、見かけ上見えなければ「寛解」という定義になるわけです。
ということは、たまたま取り出した部分にリンパ腫細胞がなく、他の場所に残存している可能性もあるわけで、当然抗がん剤やリツキサンの影響がなければ、それらの検査に引っかからなかった細胞が増殖する可能性があるわけです。
特にYの場合のように、リンパ腫細胞がいつごろ、どこで発生したか分からず、腫れている部分がないにもかかわらず、いざ治療を始めて見ると、かなり悪性度の強い細胞のようだということが分かってきた場合、再発の確率が高くなるように思えます。
つまり発生部位が骨髄中とか、発生時期が造血幹細胞の初期段階であるような場合、見かけ上抗がん剤で細胞が見えなくなっても、新たに出現してくる可能性が高いということになります。
そこで抗がん剤治療終了後も「リツキサン」を使って治療を継続するわけですが、この薬剤はリンパ腫細胞のCD20というたんぱく質を標的にして結合する薬剤です。
従って、そのたんぱく質がまだ表面に出現していない時期でリンパ腫細胞が生まれていれば、表れた細胞には効果を表しますが、おおもとの製造過程にある細胞には効果がないわけで、結局いつまで立っても治らないということになりそうです。
一方、寛解に至ったあと、まったく再発せずに健康状態に戻る方も多数います。しかしこの方たちも治療終了直後に、体内のリンパ腫細胞が100%一掃されたとは思えません。
つまりこの方たちが治る理由は、残存細胞に対して、リツキサンはもとより本人たちの免疫力が活躍して、すべてのリンパ腫細胞を殲滅したと考えるのが妥当のように思えます。
であるなら、冒頭の主治医の「少しでも体力を回復」という言葉は大きな意味を持っている気がします。
つまり体力を回復すると言うことは、適度な運動をして、良質の食事をたっぷり取り、睡眠を確保しすることによって、全身の血液の流れを活発にして免疫力を高めるということに他ならないと思うからです。
ところがここで大きな矛盾を感じます。それは、最初に行う化学療法の薬剤が強力な場合、その副作用等で患者さんの体力も大きく失われると言うことです。
上の説明からすれば、体力がなければ免疫の力は弱くなりますので、残存細胞が再び増殖して再発する可能性は大きくなります。
かといって、最初の抗がん剤治療を弱めにすれば、いつまで立っても患者さんは寛解に至らないという可能性もあるわけで、このあたりの調整がひじょうに難しい病気だということです。
その意味では、Yの場合、かなり強い治療を最初から行いましたから、再発の可能性は高いわけで、それが「万が一再発をしたときに備えて」という、ちょっと含んだ医師の返答になったのかなと今は冷静に捉えています。