日々の出費と私の心境

 6月19日(火)、転院2日目。

 無事に転院を済ませたので精神的に少し楽になり、いつもの早朝ウォーキングに出かけた。しかし歩きながら、つい今後のことを考えてしまう。

 Yの症状に思いを馳せると、いつのまにか悪い方向への可能性を検討している自分を発見する。慌てて自己否定する。「そうじゃないだろう。前向きに考えなきゃ駄目じゃないか」「明るくいこう」「胸をはれ」歩きながら、心の中で自分自身に呼びかける。

 見晴らしの良い場所で、病院はどちらの方向にあるか立ち止まって探す。直線距離で7〜8キロメートル離れているので、残念だが建物はまったく見えない。しかしこの方向と思える向きに立ち、「がんばれよ」と念を送る。

 仕事に出かけるが、頃合を見て私の母親と共に病院へ行く。腎臓のはたらきが弱っているので、回復させるため水分を多くとるようにと指示されている。

 しかし病院の洗面用の水は雑菌の繁殖のおそれがあるのか、飲用には向かないと言われている。そこで、行く途中のスーパーでペットボトルのお茶を購入する。

 これがほぼ毎日必要になる。代金も馬鹿にならない。500ミリリットルペットボトルを一日5本で、約500円。(2リットル入りの方が経済的なのだが、飲みきりサイズにしないと雑菌が繁殖すると言われた)これに病院へのガソリン代が加わる。

 他にも入院に当たって、ちょっとした食べ物(許可される範囲で)やテレビの使用料、暇つぶし用の書籍など、諸々併せて一ヶ月で数万円の負担だ。

 もちろん金を惜しんでいる場合ではない。しかし本来の生活なら必要なものではなく、余計な金額であることも事実だ。

 咳は少し出ていたが、顔色も良くなり、熱も下がっている。母親も嬉しそうだ。高齢なので病気の詳しい内容は理解できないが、本人の顔色や様子を見て、元気なようなら安心する。

 鼻から酸素吸入が行われ、うがい薬のイソジンが処方されていた。午前中に心電図検査を行い、午後からは皮膚生検、肺血流シンチ(肺内部の血の流れを調べる)、心臓のエコー(超音波検査)が予定されている。

 検査のオンパレードだ。「これほど必要なのだろうか」とも思えるが、これらの検査は病気の現状分析だけが目的ではない。抗がん剤に体が耐えうるかどうかの検査も含まれているのだ。

 帰りがけ、たまたま居合わせた主治医から現状の説明を簡単に受けた。

 「若いため病気の進行が早いようです。早期に治療したいのですが、体力が落ちています。現在大量のステロイド剤を処方した関係で熱が収まり、体調が良くなったように見えます」

 「体力がない時に抗がん剤の治療を行うと、腫瘍崩壊症候群(抗ガン剤により腫瘍細胞がいっきに血液中に溶け出し、体に異変が起きる)により腎不全や心不全にいたることがあります」

 「明日さらに詳しい検査結果が出るので、詳しい結果をお知らせします」とのことだった。

 病室では元気そうに見えたので、早くも快方に向かっているのかと先走って考えていたが、現実はそんなに甘くない。医師の話を聞いて一瞬にして奈落の底へ。気分の浮き沈みが激しく、感情のコントロールが難しい。


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