PET検査結果

 6月29日(金)、転院12日目。夕方、病院着。朝6時の体温は36.7度。午後1時からPET検査。

 なにやら可愛らしい名前だが、血液中に放射線を含んだ糖分を入れ、これがどこに集まるかを撮影する検査だ。

 糖分が集まる所は代謝速度が早い。ガンが増殖している場合は代謝速度が早くなるので、その場所でがん細胞が増殖していることが分かる。まことに便利な検査だ。

 所要時間は約3時間。このとき使った造影剤は、おしっこの形で出てしまう。ちなみに検査そのものはだいぶ一般化してきたようだが、単に健康診断のためにこの検査を行うと保険が利かず、かなりの高額料金が請求されるらしい。今回は治療の一環なので保険診療となる。

 私が到着したときはまだ検査中だったが、しばらく待っていると看護士に付き添われ病室に戻ってきた。咳は相変わらずで、喉の脹れも変化無し。幸いなことにPETに関係した副作用はなし。咳と喉を除けば元気に見える。見た目は通常の風邪と変わらない。

 翌30日(土)、転院13日目。昼過ぎ病院へ。主治医に会い、病室でYとともに昨日のPET検査の結果を教えてもらう。結果は予想以上に悲惨。Yや私が落ち込まないように気を使いながら教えてくれる。

 「骨髄全体に病変が見られます。左肺には胸水が少しある事がわかりました。左脇の下のリンパ節にも病変があり、腎臓も可能性がありますが、もともと分かりにくい部分なので、これははっきりと断言できません。ただし腎臓については、入院当初に比べ数値的にはかなり改善しています」

 「そこで、来週中には新しい治療を始めたいと考えています。血液検査の結果、貧血と血小板減少が見られますので、輸血を行っています。これらの血球減少の原因は骨髄での血球生成が、リンパ腫細胞によって阻害されているからだと考えられます」

 「今後の治療内容はリツキサンを中心に行い、その他の薬物を併用する予定です。その場合薬物は抗がん剤ですから、副作用は白血球減少、血小板減少、発熱、口内炎、下痢が予想されますが、万全の準備のもとに投与を行う予定です」

 「昨日のPET検査で、現状で行うことが出来るほとんどの検査は終了しました。今後は体力を回復させ、全力で治療を行いたいと思っています。」

 丁寧な言い回しで、現状と今後の治療について、詳細に説明してくれた。専門用語が多いので理解しにくい部分も多かったが、主治医の意志の強さや誠実さを感じた。

 とはいうものの、状況はひじょうに厳しい。要はリンパ腫細胞が体のあちこちに散らばり活動しているということだ。そんな状態から回復するなどということが可能なのだろうか?疑問に思うがYの前ではなかなか口に出せない。一方これでようやく病気の全貌が明らかになり、闘う対象が見えてきたようにも思えた。


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