再発の不安を抱えながら旅行を楽しむ

 10月29日(月)。退院翌日。

 Yは我が家から車で1時間弱の実家で生活を始めた。気心の知れた母親と一緒であるから、心身ともにリラックスできるだろう。

 私のほうは、病院通いがなくなり、これまた時間的余裕が生まれた。土日のどちらかに様子を見に行けばよい。時間的にも精神的にもずいぶん落ち着いた。

 足元がまだ危なっかしいので、歩行器を購入。よく道ばたで、おばあさんが押して歩くのを見かける。お年寄り用なのか、概して地味な柄やデザインのものが多い。

 その中で、40代後半のYのために、紺系の少し若々しいデザインのものを選んだ。大きな入れ物とかは必要ないが、ちょっと疲れたときに椅子に変わる優れものだ。

 実際歩くときは、ちょっと体を支えるものがあるだけで、歩行はずいぶん楽になるとYが言っていた。行動半径が広がれば、リハビリにもなるし、気分転換も出来る。

 11月2日(金)。退院5日目。

 通院によるリツキサン治療。同時に血液検査。退院時に比べるとLDHの値が若干上昇。原因は不明。

 クレアチニンは入院してから常に高めの1前後で推移している。なかなか下がらない。初期の高カルシウム症で腎臓がかなり痛めつけられたからだと思われる。主治医からは、常に水を多めに飲むように指示されている。ちなみに送迎は私が担当で、我が家から実家まで車で1時間弱である。

 ということは、1時間かけて実家に行き、Yを車に乗せ、やはり1時間かけて大学病院に行き、そこで診察、検査。

 さらに必要な薬剤を近辺の薬局で購入し、その後は我が家に寄ったり、近辺でお茶をしたりして、再び実家へ。

 さらに実家から我が家に戻るので、この日は1日つぶれてしまう。それでも数時間一緒にいられることは、精神的にも良い。元気な姿が見られればなおさらだ。

 この日はCRPも2.55と上昇。もしかすると、無菌室から雑菌がうようよいる?一般社会に出たため、体が反応しているのかもしれない。退院前に処方されていたノイトロジンの影響で、白血球は8410と多くなっている。

 Yは家の中を歩き回ることにより、少しずつ体力が回復している。

 14日(水)。退院17日目。

 主治医からは人ごみには出かけるなと言われていた。ならば田舎への旅行ならいいだろうと勝手に解釈。

 退院祝いをかねて、旅行と温泉が大好きなYのために、石和温泉へ出かけた。翌日は富士五湖方面で遊ぶ。歩行器を使っても、まだ長い距離は歩けない。しかし表情も明るく、一緒に出かけた息子もうれしそうだ。

 16日(金)。リツキサンの通院治療。

 これで一連の化学療法はすべて終了。あとは随時血液検査やPET、CTで経過を観察するのみとなる。

 血液検査結果は、LDHとクレアチニンの値が少し高い程度で、全体が少しずつ正常値に近づいている。Yの行動範囲も徐々に広がっている。Y自身も回復してきたという手ごたえを感じているのだろう。

 28日(水)。退院31日目。

 PET、CT検査実施。Yは自宅近辺のスーパーに、母親とともに出かけ始めた。順調に回復している。

 仕事の都合をつけて、二人で実家近くの喫茶店に行った。二人だけで話をしていると、Yが実家にいるために、年甲斐もなく結婚する前に戻ったかのような錯覚を覚える。


トップぺージに戻る  第6章 再発そして再入院へ 退院後の生活を楽しんでいたがへ