主治医の説明

 2009年1月1日(木)。新しい年が明けた。

 病院の窓からは美しい初日の出が見えたそうだ。食欲が戻り栄養剤の点滴がなくなった。ようやく治療の効果が表れ、体力も戻ってきたかと喜ぶ。

 2日(金)。息子と共に病院へ。CRPは2.76とずいぶん下がった。しかし白血球は1070で、血小板は32と相変わらず少ない。

 主治医の話では、輸血の必要性があるが月曜まで様子を見るとのことで、自力回復の兆候を探っているのかと思われたが、実は新しい病気の兆候を疑っていたようだ。そして5日(月)から、事態は急展開する。

 5日(月)。午後は仕事もほとんどなく、のんびりするつもりだったが、主治医から骨髄検査結果を説明したいという連絡があり、急遽4時過ぎに病院へ行きYとともに話を聞いた。

主治医の説明

 「咳の原因は感染症で、グロブリンを使用したことにより良くなっています。CRPも3.28まで減りました。問題点は、6クール終わった時点で血球の回復が遅いことです。ノイトロジンの注射により白血球はいったん増えますが、すぐに下がってしまいます」

 だから昨年、「血球の回復が遅いので治療を継続していいのかどうか相談したのに」という言葉が出かかるが、とりあえず話を聞く。

 「血液検査の結果ですが、抹消血中に芽球(Blast)という細胞(完全に成熟していない血球の前段階の細胞)が異常に多く観察されます。本来血球回復過程で出てくるのですが、その場合でも多くて2ぐらいです。それが10あります」

 それは昨年の血液検査でも分かっていたはず。それなのになんで今更、という疑問がまた芽生える。

 「この芽球は本来骨髄中にあるもので、血液中には出てこないはずです。そこでこのBlast細胞をフローサイトメトリーという検査で調べました。その結果、リンパ腫細胞ではないことは確認できました。ただ数が異常に多いことは間違いありません」

 いったい何を言いたいのだろう?どうも言い方が回りくどい。

 「これらの異型細胞が多くなる症状は、骨髄異形細胞症候群と言われているもので、血液中に異常な形の血球が多くなる病気です。しかもこれらの血球は、形が異常なためすぐに壊れてしまいます。そのため貧血や血小板減少等の症状が現れます」

 なるほど、これでようやく血小板が回復しない理由が判明したわけだ。しかし今後どうなるのだろうか。回復の見込みはあるのか。新たな疑問が沸き起こる。

 「原因として考えられるのは、これまで行ってきた化学療法も一因かもしれません。ただし通常これらの症状が出現するのは化学療法後2年ぐらいたってからなので、今回の症状が化学療法に起因するなら、一昨年に行ったCyclo BEAP療法の影響があるかもしれません。通常2〜3%の患者さんに起きることがあります」

 つまり最初の治療の薬剤が強すぎた可能性があるということだ。しかし通常のCHOP療法では寛解にはいたらなかったかもしれない。

 強い療法を行い、それが功を奏したために、再発はしたものの一時期は寛解状態になったのであるから、この治療の妥当性を疑うわけにはいかない。

 しかもここにいたって、そのときの治療が原因になっているかもしれないとコメントされても、これはもう患者側にはそこまでは到底予測し得ないし、主治医であっても、その当時は予想出来なかったに違いない。

 いや、出来たとしても当時の病状から考えて、強い療法を選択せざるを得なかったのかもしれない。

 とするとこの段階で、「最初の治療が行き過ぎたのでは」と主治医を責めても、これは単なる患者側のわがままだろう。しかし再発後の治療はどうだったのだろうか。やはりそこに疑問を感じてしょうがない。


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