病気の兆し

 2007年1月。「どうも最近疲れやすい」とYが言う。結婚して10数年になるが、私と違って病院通いとはまったく縁のないYである。

 当然さほど心配することもなく、「年のせいなのでは」と軽く受け流す。お互いに更年期を迎えてもおかしくない年齢なので、多少の体調不良はあって当たり前、という暗黙の了解もある。「でも心配だったら医者に行ってみたら」と一応アドバイス。

 数日後、ちょっと時間が出来たときに、我が家から車で10分程度のかかりつけの診療所に行き、血液検査を行う。1週間後の結果はまったく異常無し。各種の数値は、仕事の疲れやストレスのたまっている私よりよほど良好である。

 その後、Yの体調はあまり良くもならず悪くもならず、なんとなく疲れる、だるいといった状態が3月まで続いた。

 疲れやだるさといえば肝臓や腎臓を疑うのだが、Yはほとんどアルコールを飲まないし、人間誰しも春先は少なからず体調が悪くなるものだ。しかも、この時期はなんとなくだるいというだけで、日常生活にはまったく支障がなかった。

 しかし兆しはあった。それは飲む水の量。3月あたりから、喉が渇いたと言って、やけによく水を飲む。とはいうものの水は誰でも飲むわけで、私も昼間は仕事をしているので、Yが実際にどのくらいの量を飲んでいるのか知らなかったし、気にもとめていなかった。

 従って、当然これから大事件が起きるとは露ほども疑わず、あちこち遊びに出かけていた。特にハワイ大好き家族である我が家は、国内でもハワイ関連の店を探し出しては良く出かけていた。

 4月に入り茅ヶ崎に出かけたのも、湘南にはハワイ関連の店が多いからである。茅ヶ崎まで我が家から車で2時間強。あちらこちらに点在するハワイ関連のお店をのぞいてまわる楽しい1日だった。

 Yも楽しんではいたものの、どうもいつもより体がだるそうで、少し歩くとすぐ疲れてしまい休みたがる。頻繁に水を飲み、一時間おきぐらいにトイレに行く。

 いくらなんでも多すぎる。しかし、花粉症や風邪以外に病院の世話になったことがないYである。私もYも「変だなあ、不思議だなあ」と思いつつ、単なる疲れだろうと判断していた。


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