緊急入院

 突然、足がほとんど動かなくなってしまい、家から出るのも、車に乗るのも、上半身を支えていないと倒れ込んでしまう状態だ。

 あちこちにつかまりながら、ほんの数メートルの距離をようやく歩いている。中学1年になったばかりの息子も、その様子を不安そうに覗き込んでいるが、とりあえず留守番をさせる。

 9時過ぎに我が家から車で5分ほどの指定された病院に到着した。Y1人を車に残し、私だけが受付に走る。

 症状と診療所からの紹介であることを告げ、ほとんど歩けないYのために車椅子を借りる。今にもYが倒れこんで気を失うのではないかとも思え、やたら気が急く。

 自分自身の心臓の音が聞こえるようで、血圧が高くなっているのがよく分かるが、今はそれを気にかけている場合ではない。「冷静に冷静に、落ち着いて落ち着いて」と自分に言い聞かせながら、Yを車椅子に乗せ待合室に入る。

 待っている間も、何かとてつもないことが今にも起きそうに思え、気が気ではない。Yも意識が半分飛んでいるような状態で、ボーッとしている。「大丈夫か」という問いかけに、「大丈夫」という返答はあるが、声に張りがない。

 待合室はいつものように混雑していた。車椅子に乗った状態で、人目を気にしながら待つこと10分。病院側も最優先で受け入れてくれ、すぐに診療、検査が始まった。

 検査は血液検査、尿検査、血圧、心電図、CT、骨髄検査と続き、そのたびに車椅子とともに指定された窓口まで移動を強いられる。これだけでも精神的に疲れる。

 それでも検査をしないことには、医者もどんな病状なのか判断できない。十時ぐらいから一連の検査が始まり、移動、待機、検査、診察を繰り返し、昼前にようやく終了。病室にひとまず落ち着く。

 病室は6人定員の大部屋で、そのうち奥の方の3つのベッドが埋まっていた。いちばん手前のベッドに寝かされる。

 古くから地元にある病院なので、病棟そのものはだいぶ古くなっている。しかし居合わせた病院スタッフは皆親切で、いろいろ気を使ってくれる。Yも病室に落ち着いたことで安心したのか、緊張気味だった表情も和らいできた。


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