治療半ばで中止した場合のリスク

 9月28日(日)、再々入院35日目。

 昼の弁当と水を持って病院へ。白血球が上昇したので、明日29日から4クール目の治療に入れるということだが、赤血球、血小板の回復はやたらに遅い。

 こんな治療を何クールも続けると、半永久的に血球が回復せず、体力のほうが先に参ってしまうのではないかと思え、4クール終了後中断出来ないものかと本気で考えた。

 我が家の近くにある図書館で、抗がん剤の副作用についての本を借りてきた。それによると、抗がん剤の効果は1クール目が一番大きく、以後効果は徐々に薄れる、と書かれている。にもかかわらず6回も行うことに、どの程度の効果があるのか、あらためて疑問に思う。

 30日(火)。昨日から4クール目が始まっている。特に問題なく治療が始まっているが、これからが不安。

 体調悪化(白血球最小)の時期は、これまでの経験から予測すると10月11日からの三連休前後になるはずだ。すぐに回復すればよいが、今回の遅れを考えると骨髄抑制の影響はかなり強く出そうだ。

 結局本人の体力が落ちるか、ガン細胞が減るかの勝負だ。どちらにしても本人にとってあまりいいことはないようだが、がんが増殖するよりは長生きできる、と言うのが現代医療の判断なのかもしれない。

 10月1日(水)。抗癌剤の本を熟読。内容は結構ショッキングだ。そもそも何種類もの抗がん剤を使わなければならない理由は、がん細胞が激しく増殖するのを防ぐためだ。

 そのために細胞分裂の、ある特定の段階で作用する薬を何種類か用意するのだ。ある薬は分裂の初期、ある薬は分裂の中期、といった具合だ。そうやって各種の薬剤が協力し合って、がん細胞の増殖を抑えていくというイメージで間違いないだろう。

 ところががん細胞もしぶとくて、1回だけ投薬しても、すべてのがん細胞に効果があるとは限らず、すべての薬剤に引っかからずに生き残るものが出てくる。そうすると、その生き残りをたたくために、再度治療を行う必要が出てくる。
 
 この再度行う時期は、ちょうど細胞の増殖周期に一致して設定されているらしい。それが約3週間という期間だ。

 そうやって、例えば1回目の治療でガン細胞の80%をやっつけたとする。しかしまだ20%残っている。これを2回目すなわち2クール目にたたくわけだが、当然うまく効果が表れたとしても、最大限20%中の80%しか効果は出ないはずだ。つまり16%が消えることになる。

 とすると最初の80%と合わせて96%のがん細胞が消滅したことになるが、残りはまだ4%ある。これを3クール目で叩くわけだが、これまで同様、最大80%にしか効果は表れない。

 とすると、この繰り返しはほぼ永遠に続く。つまりこのような治療を10回繰り返しても、数学的には必ずガン細胞は残ってしまうわけだ。しかも残存細胞は、抗ガン剤に対してより強い耐性と抵抗力を持っているはずなので、消滅していくパーセンテージは回を重ねるごとに低くなるはずだ。

 とはいうものの、何億もあるという、がん細胞を1つでも多く減らすためには、現状ではできるだけ治療を繰り返すしかない。(続きます)


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