治療半ばで中止した場合のリスク

 一方、抗がん剤は体の正常な部分にも影響を及ぼし、副作用として骨髄抑制や腎不全、心不全といった症状を起こすことも知られている。

 とすると、抗がん剤の治療というのは、その患者さんの体力を考えながら、体力を維持できる範囲で出来るだけ繰り返すというのが目標になる。その目標の標準回数が6クールという数字になったのだろう。

 (最近になって分かってきたことだが、実際のクール数はあくまで標準であって、ここの患者さんの体力をキチンと考察しているわけではないようだ。つまり医師団も標準治療をしなければならない、という呪縛縛られている可能性がある)

 しかしどんなに化学療法を繰り返しても、必ずわずかにがん細胞が残るということになってしまうと、治癒や寛解の望みはないように思えてしまう。そこで注目されるのが自己免疫なのだろう。つまり自分自身の免疫細胞で、残ったがん細胞をやっつけるということだ。

 数多くの民間療法は、このあたりの視点で販売されているものが多い。我々一般的な健常人も、この免疫細胞が常時活躍しているので、がんにはならないのだ。

 話がそれた。要は、可能ならなるべく数多く治療を繰り返したほうがいいのだが、体力的に限界があるので、そのぎりぎりのところまで治療を続けるというのが、現代の化学療法の基礎になっているように思える。

 しかしそうなると、どこまでがその人間にとって体力の限界なのかの見極めがひじょうに大切だ。そこで医師たちは、過去の例を参考にしながら、年齢や体力を考慮し、標準的な治療期間を設定するわけだ。それが一番論理的な方法だし、患者や家族への説得力にもなる。

 それと同じように、患者自身が感じる自分の体力や、生活を共にしてきた家族が感じる患者の感情や体力という観点も、実はかなり大きなポイントを占めるはずだ。

 しかし医師たちもプロ意識を持っているので、患者や家族からの視点は軽視される場合があるように思える。また患者や家族も自らの知識が不足しているため、つい医師任せになってしまい、治療をやり過ぎてしまうという事態が起きる可能性もある。

 今回のYの場合も、今後4クール終了後の回復がどの程度遅れるか、また赤血球や血小板の減少がどのくらいかによって、治療を継続すべきかどうか、強い決断力が必要になるはずなのだが・・・。


トップぺージに戻る  第8章 再々入院と治療への不審 主治医に疑念を伝えるへ