治療方針と副作用の説明 

 再び病院に戻ると、主治医が病室に来て、病状と治療方針の説明。

 「白血球が異常に多く、芽球は退院時9%だったものが現在15%です。病名は急性骨髄単球性白血病で、特徴は芽球、単球が異常に増えることです」

 「最初の兆候は歯茎がはれたことです。本来なら白血球1000ぐらいで様子を見ながら治療をしたかったのですが、このままの状態ですと発熱や強い全身の痛みが予想されますので、急遽入院して治療をおこなってもらうことにしました」

 「治療方針はキロサイドを24時間投与で7日間連続、イダマイシン(DNAの複製を阻害する抗ガン剤)3日間連続投与で、結果を見てその後の治療方針を決定します。これらの薬剤の特徴は骨髄抑制が強く出ることです。また副作用は強い吐き気です」

 さらに

 「連続投与の場合下痢が起こりやすくなります。これは腸内の細菌がすべて死んでしまうからです。従ってこの間食事をすることも出来ません」

 「またこれらの腸内細菌が肺で感染症を起こすこともあります。その場合は肺炎を起こします。蕁麻疹や結膜炎の可能性もあります」

 なんだか副作用のオンパレード状態になってきた。しかも当初は使わないと言っていたキロサイドも使うという。

 そこまでしないと治療できないという事だが、立ち向かうYの心中は辛いものがあっただろう。唯一の支えは、これまでの抗がん剤では味覚異常や痺れ以外には、吐き気や嘔吐といった苦しい症状が出ていなかったことだろうか。それにしてもまさに毒をもって毒を制す状態だ。

 続いてイダマイシンの副作用について。

 「イダマイシンの副作用は不整脈や心不全です。そこであらかじめ心臓超音波検査を行い、治療に体が耐えられるかどうかを確かめます」

 「以上の治療後1週間ぐらいたってから、骨髄抑制が強く出るので肺炎、肺血症、カビ真菌症が起きる可能性があります」

 「また、体がうまく反応すると治療後2〜3週間は白血球が50ぐらいに減少しますので、この期間は厳重に管理する必要があります」

 「治療が功を奏し、体力が戻ってきたら骨髄検査を実施します。骨髄検査後は地固め療法を何コースか行いますが、うまくいかない場合は造血幹細胞移植という治療になります」

 「移植のために遺伝子型を調べるHLA検査というものも行います」

 要するに治療がうまくいった場合は、地固めか移植を行うということだ。うまくいかない場合のことは考えたくない。しかし治療方法の選択肢は少ない。病院提案の治療方法を認める承諾書に署名を行い、夕刻から治療開始となった。


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